心臓
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42 巻, 1 号
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Open HEART
HEART's Selection (わが国における心臓移植)
HEART's Original
臨床研究
  • 丸山 貴生, 蓮池 俊明, 高田 昌紀, 福永 匡史, 斉藤 清子, 善積 透
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年42 巻1 号 p. 30-37
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    冠動脈CTにて高度石灰化により冠動脈全体が評価できなかった症例に対し, 負荷心筋血流シンチグラフィを実施することにより, 冠動脈高度石灰化症例において, 心臓核医学検査の診断・治療方針決定における臨床的意義を検討した. 冠動脈CTで少なくとも1セグメントが高度石灰化のため内腔評価困難であった連続56症例に対し, 負荷心筋血流シンチグラフィ (運動負荷もしくは薬剤負荷) を実施した. 負荷心筋血流シンチグラフィ正常例 (32例) では血行再建を要した症例は認められなかったのに対し, シンチグラフィ異常例 (24例) では79% (19例) が冠動脈インターベンションやバイパス術などの冠血行再建術を受けた. CTで内腔評価困難な冠動脈高度石灰化症例に対し, 心臓核医学検査は治療方針決定のために有用な検査法であると思われた.
症例
  • 猪原 拓, 寺内 靖順, 神野 泰, 大井 邦臣, 西原 崇創, 安齋 均, 高尾 信廣, 西 裕太郎, 林田 憲明
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年42 巻1 号 p. 38-43
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    たこつぼ心筋症から心破裂にいたった1例を経験したので報告する. 症例は89歳, 男性. 細菌性肺炎の診断にて入院. 入院翌日の心電図にてII, III, aVF, V2~6でST上昇を認めたため, 冠動脈造影を施行したが有意狭窄は認めなかった. 左室造影では, 心基部以外はほぼ無収縮であり, たこつぼ心筋症と診断した. 経過中, バイタルサインは安定しており, 心不全, 致死的不整脈を認めることはなかったものの, peak CK 2,200IU/Lという高値であり, ST上昇が遷延していた. 第6病日, 突然PEAとなり, CPRを施行したが, 救命できなかった. 心エコーにて心嚢液の貯留, 心嚢穿刺にて血性心嚢液を認めており, 心破裂にいたったと診断した.
    たこつぼ心筋症から心破裂にいたった報告は少数しかなく, 臨床的に重要な症例と考えられるため報告する.
症例
  • 鈴木 綾子, 片山 卓志, 鶴谷 善夫, 大野 智子, 塩津 英美, 牧田 幸三
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年42 巻1 号 p. 44-47
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    症例は38歳, 女性. 3回経妊, 3回経産 (第1子は頸管無力症のため24週で死産) の既往あり. 2007年3月, 帝王切開にて第3子出産, 翌日離床時より首から肩にかけての疼痛および呼吸困難が出現した. SpO2 95% (大気) と軽度低下あり, 心電図と胸部X線写真では有意所見認めなかったが, Dダイマーは著明に上昇していた. 造影CT検査にて左側の少量胸水と下大静脈内血栓を認めたため, 肺梗塞を疑いヘパリン投与を開始した. また右後腹膜に4cm大の腫瘤も認めたが, 造影MRI検査にて内部に血栓の充満した後腹膜静脈瘤と診断した. 以後,ワルファリン内服にて加療し, 術後19日目で退院とした. 術後2カ月のCT検査では, 下大静脈内血栓と右後腹膜の静脈瘤は消失しており, 臨床経過と検査所見より卵巣静脈血栓症と診断した.
    卵巣静脈血栓症は, 全出産の0.05∼0.18%と非常に稀な周産期合併症であるが, 妊産婦死亡原因として主要な肺塞栓症を13%合併するとの報告があり, 若干の文献的考察を踏まえ報告する.
Editorial Comment
症例
  • 藤田 英子, 佐原 真, 杉山 裕章, 安東 治郎, 藤田 英雄, 森田 敏宏, 平田 恭信, 永井 良三
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年42 巻1 号 p. 49-59
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 両側腎動脈狭窄症 (RAS) による再発性の心不全と急性腎不全, あるいは治療抵抗性高血圧をきたした2症例を経験した.
    症例1: 72歳, 女性. 僧帽弁置換術後の低左心機能症例で心不全入院を繰り返していた. 今回心不全加療中に急性腎前性腎不全を発症して血液透析導入となり, その後両側RASの存在が判明した. 両腎とも8.5cm大と軽度萎縮していたが, 透析から離脱困難だったこともあり腎機能と血行動態の改善を目指してステント留置による経皮的腎動脈形成術 (PTRA) を施行した. 術直後より著明な腎機能の改善が得られ, 透析から離脱できるとともに慢性期の心不全の管理も容易となった.
    症例2: 63歳, 女性. 冠動脈3枝病変に対するバイパス術直前に, 両側RASによる難治性高血圧が顕在化した. 腎動脈エコー上, 腎硬化症の指標である腎抵抗係数は両側とも1.0と著明高値であったが, 薬物治療抵抗性の高血圧であったため両側RASに対してPTRA (ステント留置によるPTRA) を施行した. 術後血圧は著明に改善して降圧薬の減量が可能となり, その後冠動脈バイパス術が無事に施行された. 以上の2症例はいずれも症候性RASに対してPTRAが有効であった. 特異的な臨床徴候に乏しく見逃されることの多いRASとその病態, および適応をめぐっていまだ議論の多いPTRAを考えるうえで示唆に富む2症例であり, ここに報告する.
Editorial Comment
症例
  • 笠松 謙, 九鬼 新太郎, 林 泰
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年42 巻1 号 p. 62-66
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    左前下行枝にステント留置を行った2例に対して, 術前より安静時経胸壁ドプラ心エコー法 (transthoracic Doppler echocardiography; TTDE) にて冠動脈血流の観察を行った. 2例とも術前の計測において拡張期 — 収縮期血流速比率 (DSVR) の低下と拡張期血流速減衰時間 (DDT) の延長を認め,ステント留置後DSVRの上昇とDDTの短縮を認めた. 1例は5カ月後に不安定狭心症を発症, 経胸壁心エコーではTTDEでDSVRの低下とDDTの延長を認めた. その後の冠動脈造影ではステント内部に99%狭窄を認めた. ほかの1例はステント留置後無症状で経過し, ステント留置後7カ月目に冠動脈造影を行った. 造影前, TTDEではDSVR, DDTともにステント留置術後と変化は認めなかった. 冠動脈造影上再狭窄は認めなかった. 安静時TTDEによる左前下行枝狭窄のスクリーニングは再狭窄診断においても有用である可能性が示唆された.
Editorial Comment
Editorial Comment
症例
  • 野本 愼一, 住 京子, 藤島 真須美
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年42 巻1 号 p. 70-75
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    症例は66歳, 男性. 61歳ごろから食欲不振および下痢と便秘を繰り返した. 65歳ごろから膀胱神経障害を自覚し, 他院泌尿器科で治療を受けていた. 数カ月前から両下肢に歩行障害を自覚し受診. 心電図はQSパターンを示し, 頻発する変行伝導を伴う上室性期外収縮が認められた. 心エコー図では心室中隔の肥厚, 左室の求心性肥大, 心筋内に高輝度エコーを認めた.初診から1カ月後に胸水貯留, 下腿浮腫が認められた. 全身性の多様な神経症状と家族歴から家族性アミロイドーシスが疑われ, 遺伝子分析の結果, familial amyloidosis polyneuropathy (Glu61Lys型) と判明した. 心電図でQSパターンを認めたため, 冠動脈CTアンギオを施行し, RCA, LADに有意狭窄を認めた. 心アミロイドーシスで, 冠動脈CTアンギオにより心外膜 (epicardial) 冠動脈の狭窄を認めた報告はない. 家族性アミロイドーシスに合併した心アミロイドーシスについて報告する.
症例
  • 田崎 龍之介, 谷川 淳, 村井 基修, 藤阪 智弘, 柚木 孝仁, 武田 義弘, 新名 荘史, 岡部 太一, 中小路 隆裕, 星賀 正明, ...
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年42 巻1 号 p. 76-81
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    症例は65歳, 女性. 2007年4月, 労作性狭心症に対し左前下行枝に薬剤溶出性ステント (Cypher®) を留置した. 同年11月, 同部位に遅発性ステント血栓症を生じ不安定狭心症となり, バルーン拡張術を施行した. 2008年3月, フォローアップ冠動脈造影施行. 造影剤は使用歴のあるイオメプロール (イオメロン®) を使用した. 右冠動脈に約7mLの造影剤を投与したところ, 直後に頸部.痒感を訴え, 血圧低下をきたしショック状態となった. ノルエピネフリン投与で血圧は確保されたものの, 右冠動脈に閉塞性冠攣縮を生じた. 硝酸イソソルビドの冠動脈内投与を行ったが, 攣縮解除にはいたらず, ニコランジルの冠動脈投与を繰り返し, 改善した. 改善後の冠動脈造影, 血管内超音波では有意な器質的狭窄や血管解離はなく, 造影剤アレルギーによるアナフィラキシーショックから薬剤抵抗性冠攣縮をきたしたものと考えられた. 今回稀ではあるが, 造影剤による難治性冠攣縮を経験したので報告する.
症例
  • 嶋田 寿文, 横井 加奈子, 原口 剛, 大渕 綾, 三池 太朗, 大坪 仁, 西村 寛, 安川 秀雄, 今泉 勉
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年42 巻1 号 p. 82-88
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    症例は44歳, 女性. 2007年11月に右乳癌に対し乳房温存術+腋窩リンパ節郭清術が施行され, 術後に化学療法 (AC療法) を4クール (ドキソルビシン累積投与量234mg/m2) +トラスツズマブ併用療法を2クール (累積投与量491mg/m2) 施行した. 化学療法前の心機能精査では異常は認めなかったがトラスツズマブ併用療法の直後より倦怠感の出現があり当院受診. 心電図にてHR 36/分 完全房室ブロックを認め緊急入院となった. 原因検索を行ったが最終的に化学療法による完全房室ブロックと診断し永久ペースメーカー植え込み術を施行した. 一般に心障害をきたす薬剤は多種にわたるが, そのなかでも抗癌薬であるドキソルビシンによる心障害が代表的である. 薬剤性心障害の発症頻度は累積投与量400mg/m2未満で0.14%と報告されている.また最近ではHER2陽性乳癌患者に対し, 標準化学療法にトラスツズマブを併用することが多いが, 薬剤性心障害の発症率はドキソルビシンとの併用で27%と上昇することが報告されている. ドキソルビシンやトラスツズマブによる心障害は一般に急性期,亜急性期は心電図異常 (ST-T変化, QT延長など) や心室性不整脈, 心膜炎, 心筋炎として発症することが多く, 慢性期は左室機能不全によるうっ血性心不全で発症することが多い. この症例のように化学療法の慢性早期に完全房室ブロックを初発症状として発症した薬剤性心障害の報告は稀であり, この症例は心障害の発症リスクが低いドキソルビシン累積投与量400mg/m2未満でトラスツズマブ併用にて惹起された完全房室ブロックと考えられ文献的考察を含めて報告する.
症例
  • 馬渡 耕史, 春田 弘昭, 大野 朗
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年42 巻1 号 p. 89-97
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    大動脈炎症候群は大動脈とその主要分枝を中心とした狭窄や閉塞性病変, または拡張性病変とその末梢の乏血症状を含めて総称した疾患である. その後本症候群の病変部位は肺動脈にも及ぶことが知られるようになったが, 肺循環系の病変による症状はほとんど表に出ることが少ない. 今回われわれは胸痛や咳などの胸部症状を初発症状とし, 画像所見になどより大動脈炎症候群と診断され, 著しい肺動脈病変に伴う肺梗塞の胸部CT像や進行性の肺高血圧を呈した治療困難な症例を経験したので報告する.
    症例は20歳代, 女性. 高校生のころ脈が弱いと健診でいわれたことあり. 21歳時, 風邪症状と背中や胸の痛みと息苦しさで初診. 胸部X線写真で左肺に浸潤影を認め肺炎として加療され軽快した. 2カ月後同じような症状が出現したが一過性であった. その後は階段昇降時の息切れや動悸や疲労感, 脳貧血症状は感じていたが普通に生活できていた. 翌年胸部X線写真で多発性の陰影が出現したが, 前年とは別の部位で前年の陰影は消失していた. 若年女性で両上肢の「脈なし」状態と炎症所見, 血管造影の結果から大動脈炎症候群と診断した. 腹腔内の動脈病変が著しく, 心臓カテーテル検査では肺動脈圧は80/25mmHgでmulti-detector CTでの肺動脈病変も著明であった. その後も肺動脈病変は改善を認めず肺動脈圧も少しずつ上昇しており, 今後肺移植を検討せざるを得ない病態と考えられる.
症例
  • 星山 行基, 川野 成夫, 山口 裕己, 田原 聰子, 雨池 典子, 丹野 巡, 多田 英司, 角田 修, 栗田 直幸, 中村 勝太郎, 朴 ...
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年42 巻1 号 p. 98-103
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    症例は, 特記すべき既往歴のない77歳, 女性. 自宅で階段から滑り落ち倒れているところを家族に発見され, 近医を受診した際の心電図でST上昇を認め, 急性心筋梗塞を疑われ当院へ紹介となった. 冠動脈造影では器質的狭窄を認めず, 左室造影の所見よりたこつぼ心筋症と診断した. 翌日になっても輸液負荷やカテコラミンに反応せずショック状態が遷延し, 血清心筋逸脱酵素の異常高値や心電図上で著明なST上昇を認めたことから広汎な心筋障害を伴う病態と判断し同日IABPを挿入した. その後も循環動態は改善せず, 入院3日目に人工呼吸およびPCPSによる呼吸循環管理を開始した. PCPS開始後より循環動態は安定したが, 回路の流量を低下させカテコラミンを増量して血圧維持を図ると僧帽弁および三尖弁逆流, 左室流出路狭窄の増悪から血行動態をさらに悪化させるという病態が持続した. 内科的治療のみではPCPSの離脱は困難と考え, 入院7日目に僧帽弁置換術および三尖弁形成術を行ったところ血行動態は改善し術直後にPCPSの離脱に成功した. その後IABPや人工呼吸器からの離脱にも成功し, 最終的には自力歩行可能となった.
    通常たこつぼ心筋症では良好な転帰をたどるが, 本症例のように心原性ショックが遷延する場合には発症早期から機械的循環補助を行い, 左室の構造変化による重症MRや流出路狭窄を認めた場合には時期を逸せずに弁の修復術を行うことが救命につながるものと考えられる.
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