抄録
軽度低体温療法は心停止蘇生後の神経学的予後ならびに生命予後を改善し得ることが知られている. 一方で, 低体温中はQT間隔が延長するため, 蘇生後のQT延長症候群(LQTs)に対する軽度低体温療法は, QT間隔をさらに延長し催不整脈作用を呈する可能性がある.
今回われわれは, 院外心停止からの蘇生後, 意識障害が遷延し軽度低体温療法が施行されたLQTsの3例を経験したので報告する. 2例は遺伝性, 1例は薬剤誘発性であった. 全例ともに, 体温の低下とともにQT間隔はさらに延長し, 低体温療法中に最長のQT間隔が記録された. 一方, 復温終了後もQT延長は遷延した. 1例では復温中にtorsade de pointesの再発を認めたが, 3例ともに神経学的後遺症なく回復し, 軽快退院した.
LQTsの院外心停止例に対する軽度低体温療法により, QT間隔を延長し心室頻拍が再発する可能性はあるが, 同療法による神経学的予後の改善は期待し得ることが示唆された.