抄録
症例は58歳, 男性. 糖尿病にて治療中, そのほか特に既往症なし. 2008年12月感冒様症状にて近医受診. 肝障害を指摘され総合病院を紹介されたが, 心電図の胸部誘導でST上昇を認めたため, 急性心筋梗塞疑いにて当院紹介となった. 来院時高度房室ブロックと促進型心室固有調律を認め, 広範囲でST上昇, 心エコーは広範囲に壁運動低下しており, 急性心筋炎が疑われた. 緊急冠動脈造影を行い冠動脈は正常. 高度房室ブロック, 低心機能のためIABPと体外式ペースメーカーを挿入し, 急変に備えてPCPS挿入のためのシースを挿入しておいた. 翌日急にペースメーカーに乗らなくなりショック状態となり緊急でPCPS導入. 持続人工透析も開始した. 無脈性電気的活動状態が長期間続いたが, 補助循環とカテコラミン投与で血圧が60前後に維持された. 第7病日にペースメーカーへの反応が再開した. 房室ブロックは回復しなかったため恒久的ペースメーカー挿入. 低心機能のため補助循環からの離脱困難だったが, CRT-Dへのup gradeを行ったのち心臓リハビリを行い, 第100病日に独歩退院できた. 劇症型心筋炎のため無脈性電気的活動状態が持続し, 補助循環にて心拍再開まで持ちこたえた症例を経験したので報告する.