抄録
症例は65歳, 男性. 動悸を主訴に当院紹介来院. 心電図上, 心拍数150/分の上室性頻拍(SVT)を認めた.
電気生理学的検査所見: カテーテル操作により容易にSVTは誘発された. SVT中の逆行性心房最早期興奮部位は冠静脈電位CS7-8に存在し, 心室刺激中も逆行性心房最早期部位は同様の部位にあり, 減衰伝導を認めなかった. 以上より, 同頻拍は, 左側後壁の副伝導路を介する房室回帰性頻拍(AVRT)と診断した. 一方, 心房期外刺激にてjump up後, 同様のAVRTが再現性をもって誘発された. その際, 一過性にCS6-7の逆行性心房最早期部位が, His束部位に移行し, 再度CS6-7へ戻る現象を認めた. 以上の所見は, 逆行性心房伝導が一過性に副伝導路からfast pathwayに移行していると考えられ, 房室結節回帰性頻拍(AVNRT)を合併している可能性が示唆された. 実際, 経心房中隔的に左側後壁の副伝導路の離断後, 心房早期刺激により再現性をもってAVNRTが誘発された. Slow pathwayの燒灼後, 両者の頻拍は誘発不能となった.