心臓
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症例
川崎病後遺症による冠動脈瘤形成が示唆され, その診断に心臓CTが有用であった急性心筋梗塞の1例
竹内 庸浩堀松 徹雄増田 重樹三木 孝次郎藤田 幸一高田 昌紀西堀 祥晴丸山 貴生宮本 裕治
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2011 年 43 巻 11 号 p. 1473-1479

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抄録
症例は37歳, 男性. 2008年5月起床時に激しい胸痛を認め当院救急搬送された. 侵襲的冠動脈造影(coronary angiography; CAG) の結果, 器質的狭窄病変を認めず, その後のホルター心電図にて下壁に相当する誘導においてST上昇を認めたため異型狭心症と診断され内服加療されていた. 2008年10月初旬, 胸痛出現したため当院受診した. 心電図でST変化を認めず, 経過観察目的で入院した. 入院翌日, 胸痛出現し, 心電図ではII, III, aVFのST上昇, V1~2でQS型, I, aVL, V2~4で陰性T波を認めた. 心エコー検査で前壁中隔の壁運動の低下を認めた. 入院第5日目, 安静テクネシウム(99mTc)心筋シンチグラフィにて前壁中隔および下壁において集積低下を認め左前下行枝と右冠動脈領域の心筋梗塞が疑われた. 入院第7日目, CAGにて左前下行枝中間部の完全閉塞病変を認め, 経皮的冠動脈形成術を施行したが, ガイドワイヤー不通過であった. 入院第28日目, 心臓CT検査で左前下行枝中間部に血栓閉塞をきたした冠動脈瘤を認めた. 同時に, 右冠動脈遠位部, 左回旋枝遠位部に冠動脈瘤を認めた. 冠動脈瘤の血栓閉塞による心筋梗塞と診断し, 心臓血管外科に転院のうえ, 心臓バイパス手術を施行され術後経過良好である. 川崎病不全型は, 幼少期に川崎病の臨床所見がなく成人期に心筋梗塞を発症して判明することがあり, 本症例は, 川崎病後遺症として巨大冠動脈瘤の血栓閉塞により心筋梗塞を発症したと推測される稀な症例と考えられた.
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© 2011 公益財団法人 日本心臓財団
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