心臓
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症例
バンコマイシン低感受性黄色ブドウ球菌による感染性心内膜炎を発症し, リネゾリド投与による汎血球減少および感染性後脛骨動脈瘤をきたした1症例
丸山 誠代久保田 和充山之内 良雄浦田 秀則
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2011 年 43 巻 12 号 p. 1570-1573

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抄録
症例は74歳, 男性. 2009年当院で膀胱癌に対し膀胱全摘および尿管皮膚瘻造設術を施行された. その後, 急性腎盂腎炎を発症し加療していたが, 心エコーで僧帽弁前尖に可動性を伴う疣贅を認め, 感染性心内膜炎と診断し, 手術目的で他院へ転院となった. 僧帽弁置換術(機械弁)を施行され, 血液および疣贅組織の培養からバンコマイシン低感受性黄色ブドウ球菌(MIC 4µg/mL)が検出されたのでリネゾリドが投与された. 術後リハビリ目的で当院に転院となった. 入院時, 汎血球減少を認めた. 前病院からリネゾリドが4週間投与されており, その副作用と考え中止した. その後, 徐々に汎血球減少は改善を認めた. しかし, 当科転院第16病日から発熱と炎症反応高値を認め, 第20病日から左下腿痛が出現したので, 血管造影CTを施行した. その結果, 左後脛骨動脈に動脈瘤を認め, 手術目的で他院へ転院となった. 動脈瘤切除術の結果, 仮性動脈瘤であり, 血液および組織の培養からは菌は検出されなかった. しかし, 臨床経過から感染性心内膜炎に続発した感染性後脛骨動脈瘤と診断した. 弁置換術後40日目に突然発症したことから, 一度細菌感染により傷害された血管壁が, 後になって脆弱化し動脈瘤を形成したと考えた. 本症例のように感染性心内膜炎治癒後に動脈瘤が形成されることがあるので注意深い観察が必要である.
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© 2011 公益財団法人 日本心臓財団
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