2011 年 43 巻 2 号 p. 225-230
症例は70歳. 女性. 2009年4月. うつ病性昏迷状態にて他院精神科に入院となった. 入院時の心電図にてV1~6のST上昇を認めるも. 自覚症状なく経過観察されていた. 第3病日になってもST上昇が持続するため. 当院転院となった. 転院後. 虚血性心疾患を疑い心臓カテーテル検査を施行した. 冠動脈に有意狭窄は認めず. 左室造影検査にて基部の過収縮と心尖部の無収縮を認め. たこつぼ心筋症と診断した. 心臓超音波検査. 左室造影検査で心尖部に7×14mm大の血栓を認めた. 心腔内血栓に対してヘパリンとワルファリンにて抗凝固療法を行い. 血栓は第21病日に消失した. たこつぼ心筋症において心腔内血栓形成は稀な合併であるが. 塞栓症抑制のためにも左室内の詳細な検索が必要と考えられた.