心臓
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症例
左上大静脈遺残症例へdual chamber pacemaker植え込みを行った1例
中野 由加理高垣 健二川田 哲史草野 研吾伊藤 浩美馬 敦
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2011 年 43 巻 5 号 p. 688-693

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抄録

症例は, 70歳, 男性の慢性透析患者, 右前腕に透析用シャントを作成している. 1年ほど前から, たびたび, 意識消失がみられたが, 諸検査を行うも, 原因特定はできていなかった. 今回, 呼吸困難・胸部不快感にて当院受診し, 精査加療目的で入院. モニター心電図で早朝に12秒の洞停止が認められ, 洞機能不全症候群と診断, ペースメーカー植え込み術の適応と判断した. 左腋窩静脈から挿入したガイドワイヤーは通常の上大静脈方向に向かず, 冠静脈洞(coronary sinus; CS)から右房へ抜け, 左上大静脈遺残(persistent left superior vena cava; PLSVC)と診断された. 透析シャントとの関連から左側にペースメーカーを植え込む必要があり, 引き続いて左側からPLSVCを通してペースメーカー植え込みを行った. スタイレットを360ºのループとして, 心室リードを右室中隔へ, 心房リードを右心耳基部へ留置することができた. ペースメーカー植え込み後, 意識消失および呼吸困難は完全に消失した. PLSVCは, 胸部静脈奇形の中では最も多く, 全人口の約0.5%にみられるが, ほとんどの症例は無症候性で, 偶然, 発見されることが多い. しかし, その走行異常からカテーテル挿入やペースメーカーを植え込む際に問題となるため, PLSVC合併があることを常に念頭に入れる必要があり, また合併時にもスタイレットの形状を工夫することによりlead留置は可能であると考えられた.

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© 2011 公益財団法人 日本心臓財団
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