心臓
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症例
心外膜リード留置による3点心室ペーシングおよび僧帽弁置換術が難治性心不全に奏功した拡張型心筋症の1例
加藤 寿光金古 善明中島 忠入江 忠信倉林 正彦
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2011 年 43 巻 7 号 p. 918-924

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抄録

症例: 61歳, 男性. 1997年, 好酸球増多症による心筋炎から拡張型心筋症, うっ血性心不全を発症した. 2003年, 洞不全症候群に対し, DDDペースメーカーの植え込みを行ったが, うっ血性心不全を繰り返したため, 除細動機能付き両室ペースメーカー(cardiac resyncronization therapy defibrillator; CRT-D)にアップグレードした. 2007年, 頻脈性心房細動のレートコントロールのため, 房室接合部アブレーションを施行した. 2009年12月, 冠静脈洞リードのペーシング不全を契機に心不全が悪化した. 再留置を試みたが, 冠静脈洞内のペーシングでは横隔膜刺激が出現し, また, 刺激閾値が高く左室を捕捉できなかったため, 右室流出路に留置し右室心尖部の2点ペーシングとした. しかし, NYHA III-VI度, 心胸郭比65%, BNP 997pg/dL, 左室駆出率25%, 機能性僧帽弁逆流の増悪(IV度)を認め, 入退院を繰り返した. そのため, 一期的に僧帽弁置換術と心外膜左室リードの留置を追加して3点心室ペーシングを行った. 術後, NYHA II度で経過し, 心不全による入院はなく経過している. 本例は, CRTの冠静脈洞リード不全による難治性のうっ血性心不全, 機能性僧帽弁閉鎖不全に対し弁置換術, 心臓再同期療法の外科治療を行い, 心不全の改善を認めた貴重な症例である. 重症僧帽弁閉鎖不全症, 心臓非同期を合併した拡張型心筋症症例では, 内科的治療, 外科治療を含めた集学的治療により, 重症心不全の改善が期待できる.

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© 2011 公益財団法人 日本心臓財団
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