抄録
症例は82歳, 女性. 2009年1月より熱発を繰り返していた. 同年2月, 心不全をきたし当院受診. 12誘導心電図でI, aVL, V2~6誘導のST上昇, 心エコーで心尖部を中心に広範な壁運動低下を認めた. 急性心筋梗塞疑いで緊急冠動脈造影検査を行った. しかし有意狭窄病変は認めず, 左室造影検査で心尖部を中心に広範なakinesis, 心基部の過収縮を認め, たこつぼ型心筋障害と診断した. 発熱の原因として左腎周囲膿瘍の存在が判明し, たこつぼ型心筋障害の誘因と考えられた. 第5病日に腎瘻造設術のため手術室で腹臥位としたところ, 突如ショックとなり心肺停止をきたした. CPR行うも心拍再開せず永眠された. 心エコーで著明な心· 液貯留を認め, 心タンポナーデの状態であった. 剖検は希望されなかったため, 死後CT検査を行ったところ, 心· 内に著明な血液を認めた.
たこつぼ型心筋障害は, 比較的予後良好な疾患と考えられているが, 稀に心破裂症例が報告されており貴重な症例と考えられた.