抄録
Ic群抗不整脈薬を投与することにより, Brugada型心電図を呈した2症例を経験した. 1症例目は80歳, 女性. 動悸を主訴に当院救急外来受診し, 心拍数が160bpm台の心房細動を認めたため, 除細動目的でピルジカイニド塩酸塩50mgの静脈内投与を行ったところ, 除細動されないままtype 1のBrugada型心電図を呈した. そのまま経過観察を行ったところ, 心房細動は停止し, 翌日には, Brugada型心電図は消失した.
2症例目は85歳, 女性. 発作性心房細動に対し, 当院受診1カ月半前からピルジカイニド塩酸塩150mg/日を経口投与されていた. 発熱を主訴に当院救急外来受診時, type 1のBrugada型心電図を呈していた. 入院後ピルジカイニド塩酸塩を中止したところ, 発熱は持続していたにもかかわらず, 翌日にはBrugada型心電図は消失していた.
今回, Ic群抗不整脈薬投与後にBrugada型心電図を呈するも, 致死的不整脈などを認めなかった高齢女性の症例を経験したため, 文献的考察を加え報告する.