抄録
症例は, 49歳, 男性. 健診で心電図異常を指摘されたことはなかった. 父が45歳時, 兄が49歳時に夜間突然死を認めた. 2010年3月, 夕食にてアルコール摂取後, 安静時に突然意識消失をきたした. 救急隊到着時には意識清明であったが, 搬送中に心室細動(VF)を発症し除細動を施行した. 来院時Brugada型type1心電図を認め, 一過性の著明なT wave alternans(TWA)に伴って心室頻拍(VT)/VFを繰り返した. 翌日以降, type1心電図は認めず, 第3病日にはBrugada型心電図波形は消失した. 心エコー, 冠動脈造影および左室·右室造影では異常はなく, 電気生理学的検査(EPS)上baselineでは非Brugada型心電図を呈したが, 右室心尖部からの早期刺激で再現性をもってVFが誘発され, 右室流出路中隔側で遅延電位(delayed potential; DP)を認めた.
本例では, 家族歴を有したが心電図異常を指摘されたことがなく, VF発症時のみTWAを伴ったtype1心電図を呈した. 以上, Brugada症候群を示唆する家族歴を有する場合, 無症候性の正常心電図を呈する例においても, 致死的不整脈発症のリスク評価を検討する必要があると考えられた.