心臓
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43 巻, SUPPL.3 号
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第23回 臨床不整脈研究会
  • 小澤 真人, 小松 隆, 橘 英明, 佐藤 嘉洋, 椚田 房紀, 中村 元行
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_5-S3_11
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は, 56歳, 男性. 主訴は動悸. 30歳頃の健診でWPW症候群を指摘された. 2010年2月の24時間心電図で, 心拍数153回/分のRR alternanceを伴うwide QRS頻拍を認め当院紹介となった. 同年4月に心臓電気生理学検査を施行したところ, 左室側壁に順行性副伝導路を認めた. 右室心尖部頻回刺激法では, 刺激頻度の増加に伴い, 逆行性最早期心房興奮部位は, 減衰伝導を有するヒス束から, それを有しない左室側壁に移行した. 高位右房早期刺激法では基本周期600msec, 連結期310msecでwide QRS頻拍が誘発された. QRS波形は洞調律時のδ波極性に一致し, いずれも副伝導路を順行し, ヒス束心房波を逆行性最早期心房興奮部位とする368msec(N)と498msec(N+1)の頻拍周期を交互に繰り返す頻拍を間歇性に認めた. RR alternanceを伴う頻拍は, AV間隔は190msecと一定であったが, VA間隔は186msec(N), 284msec(N+1)と変化していた. 以上からRR alternanceを伴う逆行性房室回帰性頻拍と診断し, 高周波カテーテル心筋焼灼術により左室側壁副伝導路の離断に成功した. その後, 高位右房早期刺激法で房室結節3重伝導路の存在と, 右室頻回刺激でintermediateならびにslow pathwayの逆行性伝導の存在が確認された.
  • 吉原 弘高, 川崎 智広, 牧野 仁人, 高瀬 哲郎, 中村 龍太, 海老原 敏郎, 谷口 優, 清水 しほ, 廣瀬 信, 登根 健太郎, ...
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_12-S3_20
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は44歳, 女性. 以前よりWPW症候群を指摘され, 失神前駆症状を伴う動悸のため当院へ紹介された. 12誘導心電図では, 後中隔副伝導路が示唆されたが, 心臓電気生理学的検査時は複数のQRS波形が認められ, 副伝導路が複数存在する可能性も示唆された. 上室性頻拍(PSVT)は3種類誘発され, いずれも左脚ブロック型のwide QRS頻拍であり, PSVT1とPSVT2は同一のQRS波形で, 心内の興奮伝播様式も同一であったが, VAおよびAV間隔が異なり相互の移行も認められた. PSVT3は前2者とは異なりデルタ波の極性と一致したQRS波形であった. また, 心房期外刺激ではjump up現象とそれに伴い副伝導路の伝導途絶が認められた. これらの一連の挙動は副伝導路としてnodoventricular accessory pathwayを想定すると説明可能であり, 洞調律下に最早期心室波を指標としてカテーテルアブレーションを行い, 副伝導路の離断後はいずれのPSVTも誘発不能となった. Nodoventricular accessory pathwayは非常に稀であり, 結節および心室端の付着部について考察を加え報告する.
  • 榎本 善成, 野呂 眞人, 伊藤 尚志, 久次米 真吾, 森山 明義, 熊谷 賢太, 酒井 毅, 坂田 隆夫, 杉 薫
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_21-S3_27
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    近年, 3次元mapping systemの発展により, 心臓の電気的興奮伝播様式を可視化することが可能になった. 今回, われわれは, WPW症候群例において, 従来, 推測されていた興奮伝播様式をEnSite systemを用いて可視化し得たので報告する. 症例1は16歳, 男性, type Aの症例であった. 頻拍発作中の冠静脈洞(CS)内および左房弁輪部のisochronal mappingでは, 左室からの電気的興奮が副伝導路を介して左房に伝播し, 左房からの興奮がまずCS中間部に伝播した後に, CS近位部と遠位部に分かれて興奮伝播する様子が観察された. しかし, 副伝導路焼灼後には, CSと左房のconnectionが遮断されたためか, 最早期興奮部位がCS入口部となり, CS近位部から遠位部へ興奮伝播が変化しており, EnSite上もそれを反映するように変化していた. 症例2は68歳, 男性, 卵円孔開存(PFO)のあるtype Aの症例であった. 頻拍中, および心室ペーシング中の右房内isochronal mapでは, 副伝導路を逆行性に左房側壁に進んだ興奮がバッハマンバンドルを介して右房中隔上方から右房内へ伝わったと考えられる興奮伝播様式がEnSite上確認できた. しかし, 副伝導路焼灼後には, 房室結節を逆行する室房伝導がCS入口部付近から右心房にかけてみられる興奮伝播様式に変化していた. 症例3は29歳, 女性, 心房中隔欠損(ASD)のあるtype Aの症例であった. アブレーション終了後に左房天蓋部, および左房峡部からそれぞれ電気刺激を行うと, 左房から右房への興奮伝播が両心房の上部とCS近傍の2カ所から伝導しており, 左房刺激の場所により, どちらか早い興奮が右房に優勢に伝わる現象が確認できた.
  • 中川 貴史, 中村 健太郎, 笠岡 祐二, 村田 将光, 西村 健二, 瀬崎 和典, 野田 誠, 鈴木 文男
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_28-S3_33
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    持続する上室性頻拍においてP波とQRS波の出現タイミングは一定であり, 通常その関係が変化することはない. 頻拍中, 陰性P波の出現時相が, さまざまに変化したため, P波がQRS波に重なり, QRS波高が減少した房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)の稀な1例を経験したので報告する.
    症例は71歳, 女性. 月に1~2回の頻拍発作を認め入院. 心臓電気生理学的検査よりAVNRTと診断された. 入院前に記録された頻拍時の心電図では, 頻拍周期540~440ms, QRS波の直後に深い陰性P波を認めた. 頻拍周期の短縮に伴い逆行性P波は早い時相に移動し, QRS波形を変形させた. 軽度の前方移動ではS波を, より高度の前方移動ではQ波を, 中等度の前方移動ではS波とQ波を同時に形成し, QRS波形をさまざまに変形させた. QRS波高も同時に減少したが(陥没現象), 陰性P波の“重なり”効果によると推察された.
  • 林 洋史, 宮内 靖史, 林 明聰, 高橋 健太, 植竹 俊介, 坪井 一平, 中辻 綾乃, 村田 広茂, 山本 哲平, 堀江 格, 小原 ...
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_34-S3_41
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は52歳, 男性. 繰り返す動悸を自覚し, 携帯心電計で周期240msのnarrow QRS頻拍と心房細動を認めたため, アブレーションを行った. 両側肺静脈を隔離後, 冠静脈洞近位部からのburst pacingでWenckebach型房室ブロックを伴う周期240msの心房頻拍(AT)が誘発され, このATはATP 5mg静注で停止した. AT中のelectroanatomicalマッピングでは, 右房はHis束領域が最早期であったが, 局所の単極電位にR波を認めた. 左房は前壁中隔が最早期であったが同部位での焼灼は無効であった. そこで大動脈弁無冠尖(NCC)にカテーテルを留置したところ, His束領域よりも20msec先行し, 単極電位ではQSパターンとなる最早期興奮部位を認めた. ここでの通電中にATから周期350msの非通常型房室結節リエントリー頻拍(AVNRT)へと移行. その後, 通常型AVNRTも誘発され遅伝導路領域を焼灼し, これらの頻拍はすべて誘発不能となった. NCC起源ATを認め, その焼灼中にAVNRTへの移行が見られた症例を報告する.
  • 山下 省吾, 松尾 征一郎, 伊藤 敬一, 鳴井 亮介, 日置 美香, 谷川 真一, 稲田 慶一, 伊達 太郎, 杉本 健一, 山根 禎一, ...
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_42-S3_47
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は73歳, 女性. 2000年より動悸発作を認め, 2010年3月にnarrow QRS頻拍による心不全で入院. 薬剤によるコントロールが困難であったため, 同年9月アブレーション目的にて当科入院となった. 冠状静脈洞(CS)開口部が通常より著明に高位であり, His束はCS開口部とほぼ同等の高さに位置していた. 心房期外刺激によりjump-up現象から心房頻拍周期370msの頻拍が誘発され, His束に留置したカテーテルでの興奮順序はHis, 心房そして心室の順であった. 頻拍中でのreset現象はみられず, 心房興奮順序は, 心室刺激からの興奮と同様であったことから, 通常型房室結節回帰性頻拍症(AVNRT)と診断した. 電位指標により遅延伝導路をマッピングしたところ, CS開口部下方にfragmentしたslow pathway電位を認めた. 同部位において通電施行したところ, 房室結節調律を認め, 通電後はいかなるプログラム刺激によっても頻拍誘発は不能となった.
    CS開口部と房室結節が平行に位置するKoch三角は極めて稀であり, また, CS開口部下方の遅延伝導路に対する通電により根治し得たAVNRTを経験したため報告する.
  • 榎本 典浩, 大塚 崇之, 増田 慶太, 山下 武志, 相良 耕一, 澤田 準, 相澤 忠範
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_48-S3_54
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例: 19歳, 男性. 幼少時より頻脈発作を自覚, 近医にて140/分の発作性上室性頻拍を認め, 当院紹介入院. 入院中の心電図モニターでも同様のlong R-P’ 頻拍が頻発していたが, 電気生理学的検査では遅伝導路を介した室房伝導を認めたものの, プログラム刺激による頻拍の誘発は不可能であった. イソプロテレノール負荷下のプログラム刺激でも同様であり, ATP 10m静注施行したところ, 再現性をもって洞徐脈からの心拍回復時に心房期外収縮, および心房頻拍が出現した. 同頻拍は冠静脈洞入口部が最早期興奮部位であり, 同部の焼灼にて心房期外収縮, および心房頻拍は消失した. ATP静注にて再発がないことを確認し, 術後, 再発なく経過している.
    結語: イソプロテレノール負荷を含めたあらゆるプログラム刺激で誘発されず, ATP静注のみで頻拍が誘発された症例を経験したので報告する.
  • 大和田 真玄, 石田 祐司, 伊藤 太平, 佐々木 憲一, 堀内 大輔, 木村 正臣, 佐々木 真吾, 奥村 謙
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_55-S3_60
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は71歳, 女性. 僧帽弁置換およびMaze術の既往あり. 心房頻拍(AT)および心房細動(AF)が出現し, アブレーションを行った. プログラム刺激で誘発されたAT(頻拍周期240ms)の頻拍周期がaccelerateしAF化した. Pilsicainideで停止後, 期外刺激にて同じATが誘発された. CARTOマッピングでは左房後壁に電位は確認されず, Maze術のブロックラインは完全なものであった. 僧帽弁7時方向の左房後壁を最早期とするfocal ATのような興奮伝播を示したが, 最早期の通電で頻拍は停止しなかった. 冠静脈洞(CS)内でconcealed entrainmentが確認され, post pacing intervalも頻拍周期に一致した. CS内で心内膜側の最早期より先行するfractionated potentialが確認され, 同部位の通電にて頻拍は停止した. 心外膜側左房からCSを回路に含むリエントリーが機序として考えられた.
  • 平塚 淳史, 清水 昭彦, 上山 剛, 土居 正浩, 大宮 俊秀, 吉田 吉田雅昭, 福田 昌和, 加藤 孝佳, 松崎 益徳
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_61-S3_67
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は73歳, 女性. 洞不全症候群のため, ペースメーカ植込みを施行されていたが, 2002年心房頻拍(AT)と診断された. ATは誘発されるもすぐ心房細動(AF)に移行しマッピング困難であった. CARTOで作成したvoltage mapでは, 右心房に広範な低電位領域と瘢痕領域が存在していたが, チャネルの同定ができず, AF中の異常連続電位を指標に数カ所通電を加え終了した. 2010年, 動悸の頻度が増加し再度入院. 心臓電気生理学的検査では, AT1(CL 420msec)が誘発され, EnSiteのactivation mapで右心房中隔に最早期興奮部位を認め同部位の通電でAT1は停止した. その後AT2(CL 545msec)が誘発され, 右心耳基部に最早期興奮部位を認め, 同部位の通電で誘発されなくなった. さらにAT3(CL 570msec)が誘発された. CARTOのactivation mapでは三尖弁輪を反時計方向回転に旋回しており右房峡部でpost pacing intervalがCLと一致したため, 右房峡部に線状通電を行ったところ, 通電中にAT3は停止し誘発されなくなった. 通常型心房粗動のCLは200msec前後であることが多い. 本症例のように570msecという長いCLを持った頻拍が三尖弁輪上を興奮旋回することは稀と考えられたので報告する.
  • 近藤 健人, 足立 正光, 矢野 暁生, 三明 淳一朗, 井上 義明, 小倉 一能, 加藤 克, 飯塚 和彦, 重政 千秋
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_68-S3_73
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は31歳, 男性. 2004年より嚥下時の動悸発作を自覚するようになった. 2009年12月より毎食時の動悸発作が出現するようになり, 2010年2月当院入院となった. 心房頻拍時のP’波形はIで平坦, IIで陽性, V1で+/−であった. 2月24日, 心臓電気生理学的検査を施行した. 右房, 上大静脈, 上下右肺静脈(PV), 左上PVに電極カテを留置し, ペーシングを行ったが心房頻拍, および心房細動は誘発されなかった. 水や氷の嚥下では誘発されず, 固形物嚥下にて心房頻拍が誘発された. 心房頻拍時, 右下PVで右房中隔に比べ40ms先行する電位が記録された. 右上PV起源期外収縮も認め, 心房頻拍時のmapping困難のため右PV同側隔離術を施行した. ISP負荷, およびATP静注固形物嚥下でも心房頻拍が誘発されないことを確認し終了した. 術後6カ月の間に心房頻拍の再発を認めていない. 嚥下誘発性心房頻拍は稀な疾患であり, その機序や治療法は確立されていない. 右肺静脈内の異常興奮が原因となっている症例があり, そのような症例には肺静脈同側隔離術が有効であると考えられた.
  • 近藤 秀和, 高橋 尚彦, 脇坂 収, 岡田 憲広, 油布 邦夫, 中川 幹子, 原 政英, 犀川 哲典, 谷口 弥生, 大家 辰彦
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_74
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    [目的] ATP感受性心房頻拍(Iesaka AT)の電気生理学的特性について検討した.
    [方法] EPSでATP感受性心房頻拍と診断した10症例(年齢69±21歳, 男性5名, 女性5名). ATP(5mg)急速静注によるAT停止直前のAT-CL延長の程度と, AT中の最早期興奮部位の電位のfragmentationの有無を検討した.
    [結果] (1)最早期興奮部位での心房電位が明らかなfragmentationを示した症例は5例〔frag(+)群〕, そうでなかった症例は5例〔frag(−)群〕であった. (2)すべての症例で, ATP静注後, AT-CLが延長して頻拍を呈したが, 停止直前のAT-CL延長の程度は, frag(+)群の方が, frag(−)群に比し軽度であった(11.2±12.8 vs 38.6±16.1ms, p<0.01). (3)頻拍中の3D-Electro Anatomical Mappingを5例で行った〔3例がfrag(+)群, 2例がfrag(−)群〕. frag(+)群では, 最早期興奮部位近傍にlow voltage zoneが認められ, これに一致して伝導遅延が認められた. 一方, frag(−)群ではこれらの所見を認めなかった.
    [結語] ATP感受性ATは, 最早期興奮部位でのfragmentationの有無によりATPによる停止様式が異なり, 2つのカテゴリーに分類できる可能性が示唆された.
  • 奥村 恭男, 渡辺 一郎, 小船 雅義, 永嶋 孝一, 真野 博明, 園田 和正, 小船 達也, 大久保 公恵, 中井 俊子, 國本 聡, ...
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_75-S3_81
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例1: 36歳, 男性. 主訴: 動悸. 現病歴: 10年前より肥大型心筋症を指摘され, 当院外来通院中であった. 最近, 発作性心房細動(PAF)による動悸を自覚するようになり, 今回, ablation目的に入院となった. NavXガイド下にirrigated-tipカテーテルにより肺静脈隔離(PVI)を行った. 術後10カ月間再発を認めていない.
    症例2: 69歳, 男性. 主訴: 動悸. 現病歴: 近医にて6年程前より発作性AFにて外来通院していたが, 1年程前より全周性の肥大を指摘されていた. 多剤抗不整脈薬抵抗性AFにて, 平成21年1回目のablationを行った. CARTOガイドに4-mm tipカテーテルにて左上下, 右上PVの隔離を行うも, 左上PVの完全隔離は得られなかった. 術後, ベプリコール200mg内服にて症状軽快したが, 7カ月後より動悸発作が頻回となったため, 2nd sessionを行った. NavXガイドに, irrigated-tipカテーテルにて伝導再開を認めた右上下PVの完全隔離を行った. その後もAFは持続するためCFAE mapを作成した. 左心耳周囲のCFAE領域への焼灼にて心房頻拍へ移行した. 頻拍のactivation mappingでは左心耳—左PV間の上方に最早期部位を認め, 同部位の通電で停止した. 術後6カ月間, 再発を認めていない.
  • 井上 耕一, 木村 竜介, 豊島 優子, 伊東 範尚, 増田 正晴, 岩倉 克臣, 藤井 謙司
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_82
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    心房細動(AF)に対して電気的除細動(CV)しても直後に再発してしまう症例があり, Immediate Recurrence of AF(IRAF)と言われている. 我々の持続性AF連続263例における検討では, IRAFのTriggerとなるPACの焼灼の可否は, アブレーションの成否に極めて大きな影響を与えていた(相対危険度=5.6, 95%CI=2.4−13.1). また, 約9%の症例でNon PV TriggerからIRAFを認めていた. しかしながら, これらの症例では, CVをして洞調律化してもPAC出現とともにすぐにAFに移行してしまうため, マッピング毎に, 極めて多数回のCVが必要となってしまう. このため通常のマッピングはその起源を明らかにすることは困難であり, 焼灼は極めて難しい.
    今回, Non-PV triggeによるIRAFを示した持続性AF症例連続4例に対するカテーテルアブレーションを提示し, Non-PV fociに対するアブレーションにおける当院の工夫と, その限界について報告したい.
  • 水上 暁, 鈴木 誠, 中村 玲奈, 阿部 昌巳, 大野 真紀, 吉田 誠吾, 瀬谷 美瑛, 末永 祐哉, 岩塚 良太, 瀬戸口 雅彦, 長 ...
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_83-S3_88
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は, 55歳, 男性. 基礎心疾患はなし. 強い動悸症状を伴う薬剤抵抗性の持続性心房細動に対し, 肺静脈隔離術を施行したが再発し, セカンドセッションにて肺静脈の再隔離および後壁隔離を行った. 手技中にperimitral flutterが誘発されたためmitral isthmusにブロックラインを作成した. その後も心房粗動様の不整脈の再発を認め, カテーテルアブレーションを行った. 両側の肺静脈および後壁の隔離を確認し, 左房のCARTOによるactivation mappingおよびentrainment pacingにてperimitral flutterと診断した. Mitral isthmusにブロックラインを再度作成しようとしたが困難であり, 左上肺静脈から僧帽弁輪前壁側に向かってanterior lineを作成したところ頻拍の停止を認め, 誘発不能となった. 以後, 外来にて再発なく良好に経過している.
  • 黒川 早矢香, 庭野 慎一, 佐藤 孝典, 青山 祐也, 村上 雅美, 竹内 一郎, 湯本 佳宏, 上野 和行, 和泉 徹
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_89-S3_94
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は76歳, 女性. 心房粗細動に対して近医でベプリジル(Bep)100mg/日が投与されていた. 2010年8月意識消失し, 救急隊到着時に心室細動(VF)を認めた. 自動体外式除細動器(AED)で除細動され, 当院に搬送された. 来院時の心電図ではQTc間隔が0.71秒1/2と著明に延長していたが, 血中Bep濃度は358ng/mLであり, BepによるQT延長であるか否かは不明であった. 入院後Bepを中止したが, 血中濃度は連日上昇し, 第4病日にピーク(847ng/mL)を示した. この経過中, 心電図のQTUc間隔は0.60~0.64秒1/2と著変なかったが, 血中濃度上昇に伴ってV2~4誘導に陰性成分を伴うT-U波が出現し, その後のBep濃度の低下とともに消失した. 本例では, VFが生じた機序は必ずしも明らかではないが, Bepを中止後も4日間にわたって血中濃度の上昇が起こるという特異な現象を観察した. また, 血中濃度はQTc間隔よりもT-U波の陰性成分出現とより相関していた.
  • 若月 大輔, 東 祐圭, 田辺 彩夏, 山谷 清香, 前澤 秀之, 本田 雄気, 下島 桐, 浅野 冬樹, 江波戸 美緒, 鈴木 洋, 嶽山 ...
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_95-S3_101
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は, 31歳, 男性. 2002年(23歳時)に失神が出現し, 心電図波形からBrugada症候群と診断された. 不整脈の家族歴はない. 電気生理学的検査で心室細動(VF)が誘発され同年, 植込み型除細動器(ICD)を植え込みした.
    2005年にVFが出現しキニジン450mg内服開始した. 同年に再度VFが出現し, シロスタゾールを100 mg追加した. その後5年間VFの出現はなかったが, 2010年6月深夜VFのストームが出現した(独立した適切作動が5回). 入院し, シロスタゾールを200 mgへ増量し, いったん安定したように思えたが, 7月深夜に再びVFが2回出現した. キニジンを中止し, ベプリジル200mgへ変更したところVFの出現を予防できた.
    ベプリジル内服後は内服前に比べて, 心電図V2のSTレベルが低下し, ホルター心電図によるQT-RRのslopeが改善, 深夜のT wave variability(TWV)が減少する所見を認めた. 加算平均心電図および深夜のlate potential(LP)は変化なかった.
    今回, 夜間にVFのストームをきたしたBrugada症候群がベプリジルとシロスタゾールの併用で予防でき, さらに, ホルター心電図によるTWVの値が薬剤変更後に低下している所見を認め, 薬効評価に対してTWVが有効である可能性が示唆された.
  • 加藤 信孝, 山分義 規義, 大坂 友希, 佐藤 弘典, 一色 亜美, 鈴木 秀俊, 鈴木 篤, 清水 雅人, 藤井 洋之, 西崎 光弘, ...
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_102-S3_110
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は, 49歳, 男性. 健診で心電図異常を指摘されたことはなかった. 父が45歳時, 兄が49歳時に夜間突然死を認めた. 2010年3月, 夕食にてアルコール摂取後, 安静時に突然意識消失をきたした. 救急隊到着時には意識清明であったが, 搬送中に心室細動(VF)を発症し除細動を施行した. 来院時Brugada型type1心電図を認め, 一過性の著明なT wave alternans(TWA)に伴って心室頻拍(VT)/VFを繰り返した. 翌日以降, type1心電図は認めず, 第3病日にはBrugada型心電図波形は消失した. 心エコー, 冠動脈造影および左室·右室造影では異常はなく, 電気生理学的検査(EPS)上baselineでは非Brugada型心電図を呈したが, 右室心尖部からの早期刺激で再現性をもってVFが誘発され, 右室流出路中隔側で遅延電位(delayed potential; DP)を認めた.
    本例では, 家族歴を有したが心電図異常を指摘されたことがなく, VF発症時のみTWAを伴ったtype1心電図を呈した. 以上, Brugada症候群を示唆する家族歴を有する場合, 無症候性の正常心電図を呈する例においても, 致死的不整脈発症のリスク評価を検討する必要があると考えられた.
  • 柳澤 亮爾, 阿部 敦子, 星田 京子, 三輪 陽介, 宮越 睦, 石黒 晴久, 塚田 雄大, 米良 尚晃, 柚須 悟, 吉野 秀朗, 伊美 ...
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_111-S3_116
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    背景: 近年の化学療法の進歩に伴って, 薬剤誘発性の不整脈がクローズアップされている. 化学療法薬の心毒性といえば, 通常は心筋の器質的障害である. われわれは, 正常心機能でありながら化学療法薬使用後に頻発性の心室性不整脈(electrical storm)をきたした症例を経験した.
    症例: 71歳の女性. 乳癌に対する術後補助療法として新規化学療法薬トラスツズマブが投与された. 以前に発作性心房細動の既往があったことから, 投与前に循環器内科で精査されたが, 心機能は正常であった. 投与6コース終了時に動悸とめまいを自覚するようになり入院となった. 心電図で連結期の短い致死性の非持続性心室頻拍が頻回に認められ, その後にelectrical stormの状態となった. 日中に増悪することから, β遮断作用を有するIII群抗不整脈薬ソタロールの経口投与を開始した. 投与後, 速やかに不整脈は消失した. 心エコーで心機能を評価したが異常は認められなかった.
    結語: 乳癌患者に対して使用拡大が予想されるトラスツズマブは, 心筋障害をきたさず, 致死性心室性不整脈を呈する可能性があるので注意を要する.
  • 林 健太郎, 合屋 雅彦, 廣島 謙一, 大江 征嗣, 牧原 優, 永島 道雄, 安 珍守, 福永 真人, 岩淵 成志, 延吉 正清, 丹生 ...
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_117-S3_124
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は71歳, 男性, 陳旧性心筋梗塞に伴う心室頻拍(VT)の診断で植込み型除細動器(ICD)を留置され, 外来フォローされていた. 入院当日, 朝方より頻回のICD作動があり, 入院の上, 抗不整脈薬を投与したが, VTの抑制が困難で準緊急的にカテーテルアブレーション(CA)を施行した. 心内膜側には, 心尖部を中心に広範な低電位領域(LVA)を認めるも再現性のあるdelayed potentialは認めなかった. Clinical VT(RBBB, CL 446msec)中にも拡張期にはvoltageの低いdullな電位が認められるのみで, 局所電位を示すようなmid diastolic potentialは認めず, pace mappingが一致する部位, VTの最早期での通電は無効であった. 続いて心外膜側にアプローチし, 心尖部を中心とするLVA内にdelayed potentialが確認され, 同部位でのペーシングにてclinical VTと一致した波形が認められ, そのままclinical VTが誘発された. 同部位ではmid diastolic potentialが記録され, 通電により4.6秒でVTは停止, 周辺部位に通電を追加しセッションを終了した. VTが停止した通電部位が心内膜側でvoltageの低いdullな拡張期電位が認められた部位と解剖学的に近接していた. その後は, 抗不整脈薬を投与せず経過観察し, ICD作動を認めていない. 心外膜側でconcealed entrainmentが確認され, 心外膜アプローチによるCAにより救命しえた貴重な1例と考えられ, また, 心外膜側のmid diastolic potentialのfar field potentialが心内膜側から観察された稀な1例と考えられ, 報告する.
  • 佐藤 英二, 八木 哲夫, 石田 明彦, 滑川 明男, 山科 順裕, 佐藤 弘和, 櫻本 万治郎, 中川 孝, 大沢 上
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_125
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は17歳, 男性. 12歳, 中学校入学時の検診にて心室性期外収縮(PVC)を指摘された. 12誘導心電図, 24時間心電図にて左室流出路(LVOT)起源のPVCの多発を認めた. トレッドミル運動負荷検査では負荷にてPVCが増加後, 心拍数150/分の心室頻拍(VT)に移行した. カテーテルアブレーションを実施したところ, 右室流出路中隔背側でVTのQRSに20msec先行, LVOTで20msec先行する電位を認め, LVOTにて良好なペースマップが得られたため, 同部位で数回通電を行ったがVTの根治は得られなかった. β遮断薬内服を開始し経過を観察したところ2年間は同様のVTの出現を認めていたが, 15歳時に行った24時間心電図, 運動負荷検査でVTの消失を認め, その後β遮断薬内服中止下でも現在までVTの出現を認めていない. 若年者のPVC/VTに対する積極的治療介入は議論のあるところであり, 若干の文献的考察も含め報告する.
  • 入江 忠信, 金古 善明, 中島 忠, 加藤 寿光, 飯島 貴史, 田村 未央, 太田 昌樹, 倉林 正彦
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_126
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    40歳, 男性. II, III, aVFで陰性P波のlong RP’ 頻拍(1)がATP静注後に周期が延長した右脚ブロック左軸偏位波形のwide QRS頻拍(2)に一過性に移行した. 右室刺激にて冠静脈洞入口部が最早期の頻拍1が誘発され, 右室刺激によるエントレインメント時のcorrected PPI-TCL difference;189msから, fast-slow type房室結節回帰性頻拍(AVNRT)と診断した. 頻拍2は房室解離を伴い右室高頻度刺激にて誘発され, 心尖部に最早期興奮部位(V-QRS: −20ms)を認め, 特発性左室頻拍(VT)と診断した. 頻拍2中には左脚後枝を逆行するが, 順行するAVNRTエコーが自然に誘発された. 遅伝導路とVTの最早期部位を焼灼し根治した. VTより短い周期のAVNRTがVTをconcealed entrainmentしたと考えられたdouble tachycardiaである.
  • 北村 健, 深水 誠二, 西村 卓郎, 渡邉 智彦, 島田 博史, 岩澤 仁, 石川 妙, 松下 紀子, 北條 林太郎, 林 武邦, 仲井 ...
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_127-S3_132
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は43歳, 男性. 嘔吐を主訴に当院へ救急搬送された. 救急外来で心室頻拍(VT), 心室細動(VF)を発症し, 電気的除細動は無効で経皮的人工心肺(PCPS)を導入した. アミオダロン, ニフェカラント, ランジオロール, 硫酸マグネシウムは無効であった. 冠動脈造影ではアセチルコリン負荷を含め有意狭窄はなく, 大動脈バルーンパンピング(IABP)と持続血液濾過透析を導入しCCUへ帰室した. 除細動後に多種類の2方向性VT(BVT)や単形性, および多形性VT, VFなど多彩な頻拍が持続した. 軸の変化のみならず, 交互に右脚ブロックと左脚ブロックが出現するBVTもみられた. BVTはアデノシン三リン酸や, ピルジカイニド, ベラパミル, プロプラノロールにより抑制されなかった. 来院より14時間後自然と接合部調律を経て洞調律へ復帰した. 第4病日にはPCPS, IABPから離脱し, 意識回復後, 発症当日に山菜を摂食していたことが判明. 来院時の保存血清中アコニチン類濃度が13.09 ng/mLと高濃度であり, アコニチン中毒と診断した. トリカブト(アコニチン)中毒による難治性不整脈の報告はあるが波形の異なるBVTを含む多様な不整脈をきたした症例は稀であり報告した.
  • 木村 雄弘, 西山 信大, 佐藤 由里子, 福本 耕太郎, 相澤 義泰, 福田 有希子, 佐藤 俊明, 三好 俊一郎, 高月 誠司
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_133-S3_141
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は79歳, 男性. 2005年, 近医で心室性期外収縮を指摘され, ジソピラミドの内服を開始された. 前立腺癌の化学療法施行目的で入院中, 夕食後の歩行時に立ちくらみを自覚し, 非持続性心室頻拍(脈拍110/分, 20連発)を認めた. メキシレチン, ピルジカイニドを内服するも, 右脚ブロック型下方軸の心室性期外収縮および同形の非持続性心室頻拍が頻発し, カテーテルアブレーションを施行した. 同時に施行した冠動脈造影, 左室造影は正常であった. CARTOシステムのPaSoを用いて, 逆行性アプローチで大動脈弁下部, 左冠尖, 大心臓静脈からペースマップを行った. 大心臓静脈から前室間静脈近位部で良好なペースマップを得たため, 左冠動脈を造影しながら静脈内から最大出力25Wで通電した. 通電による心室性期外収縮の消失と, 通電終了後の再発を繰り返した. そのため, 再度左冠尖からペースマップをしたところ, 時折perfect matchを認め, また, 心室性期外収縮の直前にprepotentialを認めたことから, 同部位で通電した. 通電により心室性期外収縮は消失し, また, prepotential後の心室性期外収縮も消失したためexit blockが完成したと判断した. その後も再発を認めなかった. 前室間静脈近位部と左冠尖からの通電により心室頻拍, 心室性期外収縮を根治し得た症例を経験した.
  • 林 達哉, 熊谷 浩司, 内藤 滋人, 松橋 論宣, 西内 英, 福家 悦子, 佐藤 千鶴, 三樹 祐子, 坂本 有, 中村 啓二郎, 深澤 ...
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_142-S3_149
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は24歳, 男性. 心房細動による動悸を認め当科紹介受診. 心エコー上, 右房と交通する左室基部~中位の横隔膜面の·胞用構造物を認め, 右房憩室の存在が指摘された. 内服にて経過観察中, 再度, 動悸発作を認め当科受診. 上方軸型を示す心拍数250bpmの心室頻拍を認め, 後日カテーテルアブレーションを施行した. Clinicalな心室頻拍は誘発が困難であったため, 両心室内において詳細にpacemapを行ったところ, 左室後壁中隔領域において, おおむね極性の一致を認めたが, QRS幅はやや狭く, 完全な一致は認めなかった. このため, 右房憩室内から先程と対側に位置する心外膜側にアプローチしpacemapを行うと移行帯, QRS幅ともに良好であり, また, 同部においてfractionated potentialを得た. 右房憩室内から同部周辺計4回の通電を行った後はisoproterenol投与下の誘発刺激でも頻拍は全く誘発されず, 現在, 外来にて1年半のフォローを行っているが一度も心室頻拍を認めていない. 本症は, 左心室が右房憩室により圧迫されている所見を認めており, 心室頻拍との関連性が推察された.
  • 術中·術後心エコー検査の有用性
    中野 恵美, 夛田 浩, 吉田 健太郎, 関口 幸夫, 山崎 浩, 五十嵐 都, 黒木 健志, 町野 毅, 成瀬 代士久, 井藤 葉子, 椚 ...
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_150-S3_156
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例: 69歳, 男性. 2008年より労作時の胸痛あり. 冠動脈に有意狭窄なく, 胸痛に一致して右脚ブロック型·左軸偏位の薬剤抵抗性心室性期外収縮(VPC)を認めたため, 同年9月, カテーテル焼灼術を施行. 左脚後枝領域(Purkinje電位記録部位)の焼灼でVPCは消失. しかし, 約半年後よりほぼ同型の有症候性VPCが出現したため, 2010年4月, 2nd sessionを施行.
    VPCは右房頻回刺激後に稀に出現するのみであり, pace mappingを施行. 左室中中隔からやや自由壁寄りの部位でgood pace mapが得られた. 心エコーにてカテーテル先端は左室後乳頭筋付着部位に位置していた. VPC時, 同部位の局所電位はQRS起始部から14ms先行していたが, Purkinje電位は認めなかった. 同部位の焼灼でVPCは消失. 翌日の心エコーにて, 後乳頭筋焼灼部位にエコー輝度上昇を認めたが, 僧帽弁逆流はみられなかった. その後, VPC再発は認めない.
    総括: 初回焼灼術の半年後に再発を認めた難治性左室後乳頭筋起源VPC症例であり, 術中·術後の心エコーは焼灼部位の同定·観察に極めて有用であった.
  • 近藤 正輝, 福田 浩二, 中野 誠, 若山 裕司, 下川 宏明
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_157-S3_161
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は58歳, 男性, 特記すべき既往歴なし. 2008年3月検診で不整脈を指摘され近医受診. ホルター心電図で心室性期外収縮(PVC)多発, 心エコーで左室拡大, 収縮力低下を認め, 拡張型心筋症疑いとなりβ遮断薬による治療が開始された. その後もPVCは多発, 左室拡大傾向を認め, 加療目的に2010年5月, 当科へ紹介となった. ホルター心電図でPVCは総心拍数の38%と頻回に認め, 心機能低下の一因と考えられRFCAを施行した. PVCは単形性で, 右脚ブロック下方軸タイプ·V6誘導はrS波形を示した. 3次元anatomical mapping system(CARTO)を用いmappingを行ったところ, 最早期部位は, 左室前乳頭筋上と考えられた. 同部位での通電でPVCは消失し, 以後, 再発は認めなかった. 術後経過は良好で心機能の改善が得られた. 頻拍誘発性心筋症の原因と考えられた左室乳頭筋起源PVCに対しRFCAを施行した1例を経験したので報告する.
  • 石川 由香子, 原田 智雄, 副島 京子, 松田 央郎, 高野 誠, 西尾 智, 渡邉 義之, 龍 祥之助, 三宅 良彦, 中川 毅
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_162-S3_167
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は58歳, 男性. 陳旧性下壁心筋梗塞, 僧帽弁置換術後, 植込み型除細動器(ICD)留置後. 軽労作で出現する数種類の心室頻拍(VT) は, アミオダロン, ソタロール, メキシレチンに抑制されずICD作動は頻回であった. VTに対しCARTOシステムに付属する新しいペースマッピングsoftware(PaSo)を使用しカテーテルアブレーション治療を行った. Voltage マッピングにて低電位領域を下壁, 前側壁領域に認めた. 誘発されたVT1~4は下壁のscarが起源で, 中隔側, 側壁側にexitが存在することが示唆され, entrainmentマッピング所見によるexit近傍(PaSO相関係数0.93)を焼灼した. しかし, VTは停止せずscarの中心部にカテーテルを動かしたところ, やや早期の興奮を認め, 同部位のアブレーションでVTは停止した. 次に誘発されたVT5, 6は非常に良好なPaSo相関係数が得られ, VT中にentrainmentペーシングを行ったところ, 心室を捕捉せずにVTは停止した. 同部位のPaSo相関係数は0.97と最も高い数値を示した. 同部位と周辺の良好なPaSo係数が得られた部位に焼灼を行いVTは停止, その後, 数カ月でVTは出現せず経過している. 複数のVTを認めた低心機能の陳旧性心筋梗塞例のアブレーションにPaSoが有効であったので報告する.
  • 渡邊 敦之, 和田 匡史, 橋本 克史, 小出 祐嗣, 池田 昌絵, 戸田 洋伸, 寺坂 律子, 中濱 一, 山田 信行
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_168-S3_176
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    慢性関節リウマチにて近医加療中. 2005年に心室性期外収縮(PVC) で当科受診歴あり, そのときの心エコーは心尖部の壁運動低下を認めていたが, EF67%で経過観察となっていた. ホルター心電図ではPVC 1988発/日(multifocal).
    2007年8月に倦怠感と吐き気·微熱(37.6℃)で前医受診, 心室頻拍を認め当院へ搬送. 植込み型除細動器(ICD)植え込み, 心室頻拍(VT)に対してアブレーションを施行. その後のVTの再発なく経過良好だったが, 2010年6月に覚醒下でのDC作動を自覚し, 当院入院. その際は, 甲状腺機能亢進症を呈しており, 内服加療にて退院. 甲状腺機能は正常化し, VTは認めなかった, 退院後, 同年7月にoptivol alert認め, 当院受診. Optivol alert受診1カ月後, VT stormの状態となり, 緊急入院. 再度, アブレーション施行し現在は抑制されている.
  • 中村 隆広, 住友 直方, 阿部 百合子, 市川 理恵, 福原 淳示, 松村 昌治, 金丸 浩, 鮎沢 衛, 岡田 知雄, 麦島 秀雄, 中 ...
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_177-S3_183
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は, 17歳, 女性. 2歳時に頻拍発作が出現し, 近医で心室頻拍(VT), 拡張型心筋症と診断され, 以後VTのため, 頻回に入退院を繰り返している. VTは右脚ブロック, 左軸偏位型, 心室レート150~180で左室心尖部起源と考えられた. 5歳時からアミオダロンを開始し, 12歳時にカテーテルアブレーション(CA)を試みたが, 完全に抑制することはできなかった. 15歳ころからQT時間延長, 甲状腺機能低下を認めアミオダロンを減量した. その後, VTが増悪し, 16歳時に入院し, VT停止のために連日メキシレチンの静注を要した. 2010年3月と6月にCAを行い, VTレートは110まで低下し, アミオダロンを中止した. フレカイニド, メキシレチンの投与を開始したが, VTは完全には抑制できず, 2010年9月に心室再同期療法(CRT-D)を導入した. 拡張型心筋症に対しCRT-D導入後, 6カ月後にVT誘発が減少したとの報告があり, 本症例の経過を報告する.
  • 坂部 茂俊, 笠井 篤信, 森 一樹, 森脇 啓至, 杉本 匡史, 堀口 昌秀, 高村 武志, 河村 晃弘, 世古 哲哉
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_184-S3_190
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は, 70歳代, 女性. 他院で心不全と診断され治療を受けていたが, 2009年秋, 当科にうっ血性心不全で入院した. 慢性心房細動で, 心エコー図上, 左室壁運動は, び漫性に低下しLVDd 73mm, LVDs 66mm, EF 0.2, MR3度, AR1度だった. 冠動脈造影検査で有意狭窄はなかった. 1カ月, 3カ月後にも心不全入院あり, CRT+房室結節アブレーションを選択した. 治療は奏功したが2カ月に再度入院した. このときVPCが1日25,000発以上ありペーシング率低下が心不全の原因であると考えられた. ほとんどが左軸偏位, 左脚ブロック型のもので, 安静と利尿により心不全が改善した後も同頻度だった. このため, VPCに対する高周波カテーテルアブレーションを行った. VPCの最早期興奮部位は右室のHis束近傍にあり, この部位の1回の通電で完全に消失した.
  • 川崎 志郎, 河村 光晴, 宗次 裕美, 菊地 美和, 横田 裕哉, 伊藤 啓之, 三好 史人, 浅野 拓, 丹野 郁, 小林 洋一
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_191-S3_196
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は53歳, 男性. 主訴ふらつき感. 2002年拡張型心筋症と診断. 2010年7月28日にふらつき, めまい感を自覚し, 当院受診. 心電図上心拍数130/分の右脚ブロック+北西軸タイプの心室頻拍(VT)であった. 心エコーではLVEF 31%で左室心尖部に血栓を認めた. VTは停止と再発を繰り返しアミオダロンの点滴を施行したところVTは徐拍化したが, ニフェカラント投与後VTは抑制された. 8月12日植込み型除細動器(ICD)植え込み. 8月15日からVT再発し, アミオダロン, ニフェカラント併用したが, VT停止せず, 鎮静によりVTは停止した. 入院時より, アミオダロン内服していたが. 8月18日からソタロール開始. 9月上旬からVT出現の頻度は減少し血行動態が維持できるslow VTになり, 自然停止を認めるようになった. アミオダロンとソタロールの併用で難治性のVTがコントロールできた症例を経験したため報告する.
  • 三輪 尚之, 沖重 薫, 吉村 浩司郎, 杉山 浩二, 植島 大輔, 志村 吏左, 神田 茂孝, 青柳 秀史, 倉林 学, 畔上 幸司
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_197-S3_204
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は57歳, 男性. 失神歴·特記すべき家族歴なし. 2010年8月, 意識消失発作にて救急搬送され, 来院時ショック状態で, 心電図にてII·III·aVF·V2~V6誘導で著明なST上昇を認めた. 血行動態の破綻するserious electrical stormを起こし電気的除細動を頻回に施行. 緊急冠動脈造影で有意狭窄は認めず, 左室造影で心尖部血栓, たこつぼ様壁運動異常を認めた. 大動脈内バルーンパンピングにて管理したが, 再度electrical stormを起こした. Amio-darone hydrochloride 125mgの急速静注は無効で, nifekalant hydrochloride 15mgの急速投与で洞調律に復帰し維持し得た.
    慢性期に施行した電気生理学的検査にて, 右室からの2連発期外刺激法にて急性期と同様の心室頻拍が出現したため, 植込み型除細動器移植術を施行. 心内膜心筋生検所見では炎症細胞の浸潤なく, 新旧の間質線維化混在所見が認められた. 99mTc-tetrofosmin心筋シンチグラフィにて急性期に認めた心尖部中心の全周性欠損像は, 慢性期には, ほぼ消失し収縮能の正常化を認めたため, 最終的に, たこつぼ型心筋症と診断された.
    たこつぼ型心筋症急性期にショック, electrical storm, 心尖部の壁在血栓を認め, nifekalant hydrochlorideの投与が有効であった症例を経験したので報告する.
  • 和泉 大輔, 池主 雅臣, 飯嶋 賢一, 古嶋 博司, 佐藤 光希, 渡部 裕, 八木原 伸江, 長谷川 奏恵, 鈴木 友泰, 相澤 義房
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_205
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    ファロー四徴症根治術後に2種類の心室頻拍(VT)が生じた症例. 根治手術は肺動脈弁輪周囲をパッチ(non-transannular patch)で拡張し, 心室中隔欠損症にパッチ縫合が行われていた. VT1は右脚ブロック型(心拍数180bpm), VT2は左脚ブロック型(心拍数180bpm)であった. Substrate mappingでは右室流出路と心室中隔に広範な低電位領域がみられた. VT1のマッピングでは2つの興奮波が8の字様に旋回しており, 1つは三尖弁と心室中隔パッチの間を伝導狭部として三尖弁周囲を旋回し, もう1つは右室流出路のパッチ周囲を旋回していた. 各々の伝導狭部からエントレイメントペーシングを行うとPPI(post pacing interval)はVT周期に一致した. さらにVT2は同様のリエントリー回路を興奮が逆旋回することによって生じた波形と考えられた. 心室中隔の狭部への高周波通電でVT1が停止し, その後はいずれのVTも誘発されなくなった. 2つの興奮波が8の字様に旋回するファロー四徴症根治術後のマクロリエントリーVTは稀と考え報告する.
  • 前田 真吾, 山内 康照, 岡田 寛之, 田尾 進, 川崎 まり子, 鈴木 雅仁, 原 信博, 鍵山 暢之, 渡部 真吾, 服部 英二郎, ...
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_206-S3_212
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は80歳, 女性. 肺サルコイドーシスの診断で通院中であった. 1985年完全房室ブロックを認め, ペースメーカー植え込み術を施行. 2005年12月血行動態不安定な心室頻拍(VT)による失神で入院し, 2006年1月植込み型除細動器(ICD)移植術を施行した. その後は安定していたが, 2010年4月にVTによるICD頻回作動を認めたため, アブレーション目的で入院となった. 左室造影検査では左室下壁基部に心室瘤を認め, EFは40%であった. 電気生理学的検査を行ったところ, 右室心尖部からの2発期外刺激で再現性をもって単型性VTが誘発された. CARTO voltage mappingでは左室瘤内を含め, 左室内には低電位領域は認めなかった. しかし, 洞調率時, 左室瘤内ではfractionated delayed potential(FDP)を認め, さらに心室プログラム刺激では局所心室電位とFDP時間が突然延長した際にVTが誘発された. このFDPはVT時には, late systolic potentialとmid diastolic potentialへ分離し, この左室瘤内でのペーシングでconcealed entrainment現象を認め, DP-QRS時間とS-QRS時間は一致した. VT中に心室瘤内で通電を開始し, 4秒でVTは停止した. 心室瘤内を縦断し僧帽弁輪まで線状焼灼し, いかなるVTの誘発も不能となった. 限局した左室瘤内に必須緩徐伝導路を認めた心サルコイドーシスに伴うVTを経験したので報告する.
  • 高谷 陽一, 岡村 英夫, 山田 優子, 野田 崇, 里見 和浩, 相庭 武司, 相原 直彦, 鎌倉 史郎, 清水 渉
    原稿種別: 第23回 臨床不整脈研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_213
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    [背景·目的] 心サルコイドーシス(CS)患者における植込み型除細動器(ICD)の作動状況についての報告は少ない. そこで, 当院でICD植込み術を施行したCS患者30例(1次予防14例, 2次予防16例)の患者背景とICDの作動状況を検討した.
    [結果] 1次予防のICD植込み症例は2次予防症例に比べて植込み時の左室収縮能が低下していた(左室内径短縮率:13% vs 20%, p<0.05). 平均4.5年の観察期間で, 1次予防のICD植込み症例は14例中5例(36%)にICDの適切作動を認め, 2次予防のICD植込み症例はほぼ全例でアミオダロンを内服していたにも関わらず16例中9例(56%)でICDが作動し, 作動症例は加算平均心電図で遅延電位を認める症例が多かった.
    [結語] CS患者におけるICDの有用性とアミオダロンの限界が示された. また, 遅延電位の有無が不整脈再発の予測因子となりうる可能性が示唆された.
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