心臓
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第23回 臨床不整脈研究会
頻拍中の陰性P波の“重なり”効果により, QRS波の陥没現象が見られた房室結節リエントリー性頻拍の1例
中川 貴史中村 健太郎笠岡 祐二村田 将光西村 健二瀬崎 和典野田 誠鈴木 文男
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2011 年 43 巻 SUPPL.3 号 p. S3_28-S3_33

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抄録

持続する上室性頻拍においてP波とQRS波の出現タイミングは一定であり, 通常その関係が変化することはない. 頻拍中, 陰性P波の出現時相が, さまざまに変化したため, P波がQRS波に重なり, QRS波高が減少した房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)の稀な1例を経験したので報告する.
症例は71歳, 女性. 月に1~2回の頻拍発作を認め入院. 心臓電気生理学的検査よりAVNRTと診断された. 入院前に記録された頻拍時の心電図では, 頻拍周期540~440ms, QRS波の直後に深い陰性P波を認めた. 頻拍周期の短縮に伴い逆行性P波は早い時相に移動し, QRS波形を変形させた. 軽度の前方移動ではS波を, より高度の前方移動ではQ波を, 中等度の前方移動ではS波とQ波を同時に形成し, QRS波形をさまざまに変形させた. QRS波高も同時に減少したが(陥没現象), 陰性P波の“重なり”効果によると推察された.

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© 2011 公益財団法人 日本心臓財団
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