心臓
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臨床研究
沖縄と香川における冠疾患リスクファクターとEPA/AAの比較
梅原 英太郎小村 泰雄木村 朋生小林 和哉田村 謙次松田 剛
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2012 年 44 巻 1 号 p. 27-35

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抄録

大規模臨床試験であるThe Japan EPA lipid intervention study(JELIS)において, イコサペント酸(EPA)は低比重リポ蛋白コレステロール(low density lipoprotein-cholesterol; LDL-C)に依存しない心血管イベント抑制作用を示し, 特に, 高トリグリセライド(TG)および低高比重リポ蛋白コレステロール(high density lipoprotein-cholesterol; HDL-C)合併例でイベント抑制効果が大きいとの報告がなされた. また, 血漿中EPAとアラキドン酸(AA)の比(EPA/AA)と冠動脈イベント発症率の間に逆相関の関係を示すことが報告されている. EPA/AAは魚類·肉類の摂取に依存する, いわば居住地域によって大きく差が生じている.
本研究では日本国内の2地域, 特にメタボリック症候群が話題となっている浦添市(沖縄県)と瀬戸内地方の1都市である坂出市(香川県) における循環器内科外来受診患者(沖縄196例, 香川120例)を対象とし, 脂肪酸分画とEPA/AA, 各種動脈硬化因子について検討した. 身長, 体重, 体格指数(BMI), 血圧, HbA1c, 総コレステロール(total cholesterol; TC), LDL-C, HDL-C, TG, EPA, AAおよびEPA/AAを測定し, 両地域の特徴につき検討した. また, 第2次世界大戦前後の60歳を境とし, 若年層と高齢者層に分け, 両地域間での差について検討した.
香川に比し, 沖縄では肥満傾向であったが, その差は高齢者で顕著であり, 若年者では緩徐であった. また, 若年者については低HDL血症が沖縄に多い結果となった. EPA, AA, EPA/AAについては, 高齢者において香川でのEPAとEPA/AAが沖縄に比し高く, 若年者において香川でのAAが沖縄に比し, 顕著に高く, EPAは香川に多い傾向にあるものの, EPA/AAは両群に差がない結果となった. 同一地域間では, 香川での若年者のAAが高齢者に比し高値を示しており, 日本国土における食生活の欧米化が強く関与していることが示唆された. 冠疾患危険因子のない症例では, 沖縄, 香川ともに脂肪酸分画に差を認めなかったことは新たな見地であった. いずれにせよ両地域ではEPA/AAはJELISの日本人ベースライン値に比し低値を示す結果となった.

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© 2012 公益財団法人 日本心臓財団
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