2012 年 44 巻 1 号 p. 37-41
症例は90歳, 女性. 高血圧, 大動脈弁狭窄症(aortic stenosis; AS) のため, 循環器内科に通院中であった. 消化管出血と貧血を繰り返すため, 内視鏡, 消化管出血シンチグラフィを施行したが明らかな出血の原因を確定するにいたらなかった. Heyde症候群を疑いvon Willebrand因子のマルチマー解析を行った結果, 高分子マルチマーの欠損が認められた. 大動脈弁の狭窄部によるvon Willebrand因子の破壊が, 出血傾向の原因であった. Heyde症候群は臨床的に見過ごされていることが多いと考えられ, 適切に診断·治療を行うことにより, 予後の改善する患者は多いと思われる.