心臓
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症例
家族による心肺蘇生と救急隊による除細動により救命され社会復帰し得た心室細動の1例(福山地区における救急医療体制と早期除細動に対する取り組み)
梶川 隆村上 敬子小橋 真司寺田 洋明長田 好規横山 宏道竹本 俊二友田 純
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2012 年 44 巻 1 号 p. 45-50

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抄録

症例は50歳代, 男性. 2010年2月ごろから出現した早朝の胸部圧迫感を主訴に来院した. 断層心エコー図検査と運動負荷心電図検査は正常であった. 冠攣縮性狭心症を疑いニトログリセリンを処方し, 胸痛時の舌下投与にて軽快を認めていたが, 数日後の夕方, 自宅で胸部圧迫感を訴えた直後に倒れて, 痙攣し, 心肺停止状態となった.
妻が目撃し, ただちに胸骨圧迫を行い, 近所の住人に救急隊通報を依頼した. 約4分後に救急隊が到着し, その2分後と4分後に自動体外式除細動器(automated external defibrillator; AED)による電気的除細動が施行された. 自己心拍は再開し, 約30分後に搬送された. 来院時の意識状態は, JCSIII-300で, 自発呼吸は微弱であったため, 気管挿管と人工呼吸とを開始した. 12誘導心電図ではIII, aVFでST上昇と, QT延長とを認め, V5~6でST低下を認めた. 入院後, クレアチンキナーゼ(creatine kinase; CK)は正常域を推移した. 第3病日に人工呼吸器から離脱し, 意識は清明となった. 第10病日に行った冠動脈造影では左冠動脈seg.7に軽度の狭窄を認めたが, 左室造影では局所壁運動は正常に保たれていた. カルシウム拮抗薬を処方後, 胸痛の再発はなく, 第12病日に退院した. 神経学的後障害を残さず職場復帰した.
福山地区では, 2008年度からの2年間で救急搬送人員数は35,784人で, このうち心肺停止状態が, 777人であった. 一般住民による心肺蘇生処置(cardiopulmonary resuscitation; CPR)は346人(44%)に行われ, 1カ月生存は5.2%であったが, CPR未施行における生存率は3.2%であった. 今後, 地域住民に対する心肺蘇生法とAEDの啓蒙普及活動が必要と考えられた.

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© 2012 公益財団法人 日本心臓財団
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