心臓
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症例
肺動脈性肺高血圧症に対してボセンタンが有効であった18pテトラソミーの1成人例
發知 淳子星賀 正明藤阪 智弘岡部 太一中小路 隆裕石原 正石坂 信和花房 俊昭
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2012 年 44 巻 4 号 p. 463-468

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抄録

症例は30歳, 男性. 生直後より口鼻周囲にチアノーゼを認め, 先天性心疾患を疑われ精査を受けるも否定的であった. 染色体検査にて部分18トリソミーと診断された(0歳時)が, 医療機関での定期的な経過観察はなされていなかった. 2005年ころ(26歳時)より労作時呼吸苦を自覚するようになり, 以後徐々に増悪. 2009年6月(30歳時), 経胸壁心エコーにて心房中隔欠損症の疑い(左—右シャント)および肺高血圧(推定右室収縮期圧104mmHg)を認め, 精査目的で入院となった. 経食道心エコーにより, 心房間交通孔は小さく, 卵円孔開存と診断した. 心外シャントは認めず, 二次性の肺高血圧症は否定的であった. 心臓カテーテル検査では心拍出量4.06L/分, 肺体血流比0.9, 肺動脈楔入圧8mmHg, 肺動脈圧67/38mmHg(mean 46mmHg), 右房圧3mmHg, 肺血管抵抗9.36Wood単位であり, 肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension; PAH)と診断. 染色体検査再検にて18pテトラソミーと判明した. 酸素吸入療法に加え, ボセンタンを1日31.25mgより内服開始し, 250mgまで増量した. WHO機能分類はIII度からII度へ改善を認め, 6分間歩行距離の延長(130m→315m), 肺高血圧の改善(推定右室収縮期圧71 mmHg→46mmHg)と血漿BNP値の改善(130pg/mL→20~30pg/mL)を認めた. 本症例の経過から, 18pテトラソミーに伴うPAHにも, ボセンタンが有効である可能性が示された.

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© 2012 公益財団法人 日本心臓財団
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