2012 年 44 巻 7 号 p. 837-843
63歳, 女性. 60歳時に原因不明の胸水, 心嚢水貯留があり自然消退した既往あり. 61歳より原因不明の胸腹水貯留, 全身浮腫が出現. 石灰化を伴わず, 心膜所見に乏しく診断に難渋したが, 超音波での拡張障害所見, 心臓カテーテル検査にて両心室圧波計のdip and plateau所見より, 収縮性心膜炎と診断した. まず内科的に治療を開始したが, 次第に右心不全が増悪し, 従来の心不全治療で限界にいたった. ループ利尿薬, サイアザイド利尿薬, ジゴキシン, カテコラミン持続静注併用下でトルバプタン15mgの内服を開始したところ, 多量の利尿を認め, 全身浮腫, 腹水, 胸水ともに改善を得た. 収縮性心膜炎は従来内科治療困難な疾患であるが, トルバプタンが心不全治療の1つの選択肢となり得る.