心臓
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症例
心臓再同期療法により心室内同期不全を生じうっ血性心不全が悪化した虚血性心筋症の1例
庭前 野菊金古 善明黒沢 幸嗣中島 忠入江 忠信倉林 正彦
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2012 年 44 巻 7 号 p. 850-856

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抄録

症例: 67歳, 男性.2010年4月労作時の息切れが出現, うっ血性心不全のため入院した.心電図は洞調律, PQ 162msec, QRS 138msec, 完全右脚ブロックを呈し, 左室駆出率16%, 三枝病変を有する虚血性心筋症であった.発作性房室ブロックにより約1分の心停止を生じたため, 永久的ペースメーカー植え込みの適応であったが, 右室単独ペーシングによる心機能の悪化を懸念し, また, 突然死の1次予防の適応から, 両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(cardiac resynchronization therapy defibrillator;CRTD) を移植した.術後, CRTDの設定を両室ペーシングにすると心不全徴候が明らかに悪化し, 自己QRS波を優先させると軽快した.移植前の心室内同期不全の指標は心エコー上ほぼ陰性であったが, 移植後には右室ペーシングのみならず両室ペーシング時にも陽性となっており, 左室駆出血流の時間速度積分値は自己QRS波>CRT時>右室ペーシング時の順に大であった.心臓再同期療法により新たな心室内同期不全を生じ, うっ血性心不全が増悪することがあり注意を要する.

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© 2012 公益財団法人 日本心臓財団
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