抄録
症例は16歳男性,45歳男性,23歳男性の3症例.いずれも先行する感冒症状を契機に突然の意識障害,血行動態破綻をきたし,心室応答をほとんど伴わない高度伝導障害を認め,緊急搬送となった.3症例とも一時ペーシング・大動脈バルンパンピング(IABP)を要し,2症例は経皮的心肺補助装置(PCPS)を併用した.いずれの症例も3~8日の経過で徐々に心室内伝導障害と洞機能の改善を認め,後遺症なく救命に成功した.寛解後の心電図にて完全右脚ブロックと完全左脚ブロックを1例ずつ認めた.電気生理学的検査(EPS),late potential,心臓MRI検査を施行したところ,完全左脚ブロックが残存した症例ではlate potential陽性,MRIで遅延造影所見,EPSにてHV間隔の延長を認めたが,他の症例では異常所見は認めなかった.一定期間の機械的補助での治療にて伝導障害が改善し,救命し得た劇症型心筋炎症例を3症例経験したので文献的考察を加えて報告する.