2012 年 44 巻 SUPPL.2 号 p. S2_48-S2_53
症例は70歳代,男性.睡眠時無呼吸症候群,アルツハイマー型認知症にて当院へ通院中であった.2010年10月下旬,車内で意識消失,全身性の痙攣発作を約5分間認め,救急要請し当院搬送された.来院時意識清明で神経内科受診となり,てんかん疑いにて脳波検査を施行した.過呼吸賦活試験中に意識消失し,モニター上,心室細動(VF) を認めた.心肺蘇生処置を行いつつ自動体外式除細動器(AED) が装着されたが,洞調律へ自然復帰し循環器科を紹介された.身体所見としてJCS1-1 血圧:130/70 mmHg,HR:45/分,SpO2:99%(room air) で明らかな神経学的異常所見認めなかった.検査所見上,心電図: 脈拍45/分,V1, 2 coved型のST上昇を認めた.緊急冠動脈造影検査では有意狭窄を認めず,過換気負荷にてVFが誘発された.Brugada症候群の疑いあり,翌日植込み型除細動器(ICD) 植え込み術を施行した.以降VFの発生は認めなかった.冠攣縮性狭心症(VSA) の鑑別目的に第14病日にアセチルコリン負荷試験を施行したが,右冠動脈の攣縮が誘発され,心電図上II,III,aVFのST低下とV1,V2誘導のST上昇を認め,冠攣縮性狭心症と診断した.Brgada症候群において過呼吸による副交感神経が亢進されVFが誘発された可能性と,過換気にて冠攣縮が誘発され虚血によるVFが誘発された可能性が考えられた.