抄録
これまで九州大学病院ハートセンターにおいて,6例の心臓移植を施行し,6例の渡航移植(ピッツバーグ大学1例,コロンビア大学2例,ロマリンダ大学1例,バドユーンハウゼン心臓病センター2例)を経験した.現在,最近移植された1例がリハビリ中,渡航移植の1例が移植後4年目に拒絶反応で死亡した.ほか10例が外来通院中である.2011年春まで,本邦で唯一長期使用が可能であった体外設置型のニプロ補助人工心臓は22例経験し,現在,1例の患者が体外設置型のニプロ補助人工心臓装着状態でハートセンター入院中であり,1例の患者が植込型補助人工心臓に移行,1例の患者が他施設で装着され入院待機中である.新規臨床導入の植込型補助人工心臓に関しては,8例の患者が装着され,1例が心臓移植を終了し,5例が外来通院をしながら移植待機中で,2例が在宅復帰プログラム進行中である.全例,日本臓器移植ネットワークの登録後に装着している.合併症に関しては4例にドライブライン挿入部皮膚の感染を認めたが,いずれも一時的な抗生物質の投与で対処可能であった.また,1例に血栓塞栓症による脳神経症状を併発したが,後遺症なく回復した.心臓移植を受けた症例に関しては,移植直前まで就労しており,入院したままの体外設置型ニプロ補助人工心臓装着症例と比べて著しく術後の回復が良好であった.