2013 年 45 巻 SUPPL.2 号 p. S2_26-S2_31
冠動脈起始異常は, 若年者における運動時の心臓性突然死の原因の 1つとされている. 今回, 冠動脈起始異常を伴い, それぞれ運動時の心室細動, 労作時の失神を繰り返した 2症例について検討し, 冠動脈起始異常により生じ得る心臓性突然死の病態を考察した. 症例 1 : 14歳, 男性. 1年前より運動時の胸部不快を自覚していた. サッカーの試合中に意識を消失し, 自動体外式除細動器 (AED) 施行時の心電図記録で心室細動が確認された. 冠動脈CTで左冠動脈右冠動脈洞起始が認められ, 左冠動脈主幹部はスリット状の狭窄を生じていた. 冠血行再建のため, 左冠動脈cut back, 左肺動脈再建術が施行された. さらに, 4カ月後の心臓電気生理学的検査で心室細動が誘発されたため, 植込み型除細動器 (ICD) 移植術が施行された. 症例 2 : 37歳, 男性. 1年前より, 労作中の胸部圧迫感と失神が繰り返された. head up tilt (HUT) 試験においてイソプロテレノール 2μg/分静注でST上昇と完全房室ブロックを生じ, ニトログリセリン口内噴霧の後に心電図所見は消失した. 冠動脈CTでは, 右冠動脈左冠動脈洞起始が診断された. 右冠動脈攣縮が考慮されたため, 冠拡張薬を開始し, 現在は症状なく経過している.