症例は74歳, 女性. 突然の胸苦のため救急要請し, 救急隊接触時は心停止. 救急隊による一次救命処置 (basic life support ; BLS) にて, 当院到着時には自己心拍再開. 外来検査にてST上昇型急性心筋梗塞と診断し, 緊急心臓カテーテル検査を施行し, 左前下行枝高度狭窄に血行再建を施行. 胸部CTにて縦隔気腫, 広範囲な皮下気腫, 血気胸, フレイルチェストを認めたため, 経皮的冠動脈インターベンション (percutaneous coronary intervention ; PCI) 後に胸腔ドレーンを挿入しICU入室. 心停止後症候群であり低体温療法を導入したが, 胸腔内出血が持続し出血コントロール困難のため, 短縮プロトコールにて実施した. 血行動態は不安定であり, 大量強心薬および大量輸血, 大量補液施行するもバイタル維持困難であった. ショック状態遷延のため, 経胸壁心エコーによる評価は困難であったため, 経食道エコーを施行した. 収縮能は良好であったが, 左胸腔に血胸を認め, 心タンポナーデによる左室流出路狭窄を生じていた. 左胸腔に直視下に大径胸腔ドレーンを追加したところ短時間で大量血液の排液を認め, 循環動態, 呼吸状態の著明な改善を得た. その後の臨床経過は第 4病日IABP抜去. 第 7病日気管切開術施行. 第10病日胸腔ドレーン抜去. 第20病日高次機能障害なし. 第28病日一般病棟へ転室. 第98病日人工呼吸器離脱. 第122病日気管孔閉鎖. 第162病日転院. 心肺蘇生術により外傷性血気胸, 心タンポナーデのみならず左室流出路狭窄まできたし診断に苦慮した 1例を経験したので報告する.