2013 年 45 巻 SUPPL.2 号 p. S2_76-S2_79
症例は86歳, 女性. 症候性大動脈弁狭窄症 (aortic stenosis ; AS) にて外科的大動脈弁置換術 (surgical aortic valve implantation ; SAVR) を勧められていたが希望されず. 経過観察中に薬剤抵抗性心不全を発症し, 改善しないため, 当科紹介となった. カテコラミン依存性のNYHA Ⅳ度の状態で, Euro SCORE 29.6%, LVEF 21%, 安静時も低心拍出発作を繰り返していた. IABP standbyにて経皮的大動脈弁バルーン形成術 (percutaneous transvalvular aortic val-vuloplasty ; PTAV) を施行した. PTAVにより, 弁口面積が0.34から0.43cm 2へ改善し, カテコラミンからの離脱に成功した. BNPも6,831から1,762pg/mLまで低下し, NYHA ⅣからⅡ度まで改善した. PTAV施行からわずか 9日後に独歩退院することが可能となった. その後, 外来にてLVEFも39%まで改善し, BNPも912pg/mLまで低下した. PTAV施行半年後に再弁狭窄から息切れの増悪とBNP再上昇をきたしたことを契機にSAVR施行に同意され, PTAV後357日後にSAVRを施行し, 成功した. 独歩退院し, NYHA Ⅰ度, BNP 207pg/mLまで改善した. 重症ASに対してPTAVにより致死的な状況を回避し, 慢性期に左室機能の改善が得られ, SAVRへのbridgeに成功した貴重な 1例を経験したので報告する.