抄録
症例は42歳, 男性. 2012年夏早朝に自宅で卒倒, 救急隊の体外式除細動器および 2次救命処置により心室細動 (VF) から蘇生, 当院へ搬送された. 低体温療法後, 高次機能障害なく回復, 各種諸検査から器質的心疾患を有さず, 安静時12誘導心電図において下側壁誘導に早期再分極 “J wave” を認めたため, 特発性心室細動, J wave症候群と診断した. 入院19病日に植込み型除細動器 (ICD) 植込み術を行い, 退院. 退院後16日目にICDの適切作動を頻回に経験し, 当院へ搬送. 心電図は心房細動 (AF) を呈し来院後もVFに対して適切作動が頻回となったが (全16回) , リドカイン, アミオダロン, ベラパミル投与によりVFは抑制された. AFは入院後15時間後に自然停止した. VFの原因としてAFの関与も考慮し, AFを誘発, 薬剤による早期再分極 “J wave” の変化を観察した後, 電気的肺静脈隔離術を施行, AFおよびVFの再発はない. J wave 症候群はいまだ明らかな原因は不明であるが, AFを契機にVFが発症したと思われJ wave症候群が強く示唆された症例を経験したので文献的考察を加え報告する.