心臓
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[症例]
自己心膜を用いた肺動脈形成術により肺実質への血流温存が可能であった特発性両側性末梢性肺動脈瘤の1例
野本 英嗣徳永 毅中野 国晃久保山 修服部 英二郎山口 裕己
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2014 年 46 巻 1 号 p. 90-94

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抄録

 症例 : 47歳, 男性. 主訴 ; 乾性咳嗽, 血痰. 既往歴 ; 2003年 深部静脈血栓症 ( 6 カ月間抗凝固療法). 現病歴 ; 2009年1 月より乾性咳嗽, 5 月中旬より血痰を認め, 他院で精査されたが原因不明であった. 9 月中旬造影CTで肺動脈瘤, 肺血栓塞栓症と診断され, ワルファリン内服を開始された. しかし, 再度血痰を認めたため, 10月中旬精査加療目的で当院に紹介となった. 入院後経過 : 胸部CTで右下葉肺動脈に30mm大, 左下葉肺動脈に46 mm大の肺動脈瘤を認め, 明らかな血栓素因はなく, 肺高血圧症, 膠原病, 感染徴候なども認めず, 特発性末梢性肺動脈瘤と診断した. 2003年と比較し比較的急速に増大傾向を認めたため, 手術の方針とし, 新東京病院で自己心膜を用いた肺動脈形成術を施行された. 考察 : 肺動脈瘤そのものが稀な疾患であるが, 末梢性はさらに頻度が少ない. また, 続発性の多くは喀血などの症状を認めるが, 特発性は無症候であることが多い. 治療は手術が原則とされているが, 肺切除や瘤切除によって肺灌流が低下すると, 肺高血圧症や右心不全のリスクが高くなる. 本症例は自己心膜を用いた肺動脈形成術により肺実質への血流温存が可能となり良好な経過をたどった. 症候性の特発性末梢性肺動脈瘤は稀であり, 今後同様の疾患に対する治療法を検討するうえで貴重な症例と考え報告する.

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© 2014 公益財団法人 日本心臓財団
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