心臓
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[症例]
外傷性大動脈弁閉鎖不全症の1例
片桐 有一上島 彩子赤沼 博唐沢 光治山本 一也北原 博人
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2014 年 46 巻 2 号 p. 216-220

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抄録
 症例は70歳代, 男性で, 高血圧による通院歴があった. 高所から転落し入院となった. 当初は軽度の肺挫傷を認めるのみで呼吸状態は安定していたが, 第4病日に急速に呼吸不全となり人工呼吸器管理にいたった. 心臓超音波検査では, 右冠尖付近から細長い布状の構造物が拡張期に左室側に翻転しているという, 特異な形態の大動脈弁逸脱が認められた. 経食道心臓超音波検査では, 拡張期に右冠尖から左室流出路後壁に向かって吹き流される布状の構造物がみえた. 前医における心臓超音波検査の既往や胸部聴診所見の記録はなかったが, 入院時から120/30mmHgと拡張期低血圧を認めていた. 受傷前の拡張期血圧は正常であったので, これは外傷により生じた現象と考えられた. 以上の所見から外傷性大動脈弁閉鎖不全症を疑った. 内科的治療では肺水腫が改善しないため, 第43病日に大動脈弁置換術を施行した. 無冠尖よりの右冠尖交連部が弁輪部から裂開し, この部分が遊離して布状となり左室側に逸脱していたことが判明した. 心嚢膜の一部に心嚢膜破裂も認め, 外傷性に矛盾しないものであった. 生体弁に置換した後は肺野の陰影も消失し呼吸状態も急速に改善した. 受傷後に新たに生じた拡張期低血圧は, 外傷性大動脈弁閉鎖不全症を示唆する重要な所見であった. 心臓超音波検査で認められた布状の弁尖逸脱は, 交連部裂開による弁尖の逸脱であり, この特異な形態の弁尖逸脱は外傷性大動脈弁閉鎖不全症に特徴的な所見であった.
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© 2014 公益財団法人 日本心臓財団
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