2015 年 47 巻 2 号 p. 172-178
症例は40代男性. 2月某日40°C台の発熱があり, その5日後に間欠性の痙攣を伴う意識消失発作を繰り返すため, 脳炎を疑われ当院救命救急センターに搬送された. モニター心電図上, 完全房室ブロックに伴う意識消失と痙攣発作が出現するため救急外来で経皮的ペーシングを開始し, その後経静脈的一時的ペーシングを施行した. 来院時, インフルエンザA抗原が陽性, 経胸壁心エコー図上, EFは40%でびまん性の壁運動低下を認めていた. 後日, 冠動脈造影を施行したが有意狭窄は認めなかった. 同時に心筋生検を行い, リンパ球を主体とした炎症細胞浸潤, 心筋細胞の断裂, 萎縮, 消失を認めており心筋炎に矛盾しない所見であった. 好酸球や巨細胞は認めなかった. インフルエンザA抗原 (H3N2) のペア血清が有意に上昇しており, A香港型インフルエンザ心筋炎に伴う完全房室ブロックと診断した. 完全房室ブロックは改善せず, 入院7日目に左胸部にMRI対応型恒久的ペースメーカー植込み術を行った. 完全房室ブロック原因精査目的にペースメーカー植込み3カ月後に心臓MRIを撮像したが, 良好な画像が得られ明らかな遅延造影所見は認めなかった.