心臓
Online ISSN : 2186-3016
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47 巻, 2 号
選択された号の論文の34件中1~34を表示しています
OpenHEART
HEART’s Selection(日本人における新規抗凝固薬の使い分け)
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 吉村 仁, 坂田 芳人, 折口 秀樹, 瀬筒 康弘, 菊池 幹, 芥野 絵里, 百名 洋平, 橋本 亨, 宮田 健二, 野間 充, 毛利 正 ...
    2015 年 47 巻 2 号 p. 147-156
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/15
    ジャーナル フリー
     背景 : 高齢化に伴い硬化性大動脈弁狭窄症 (AS) が増加している. 有症候性AS例は予後不良で外科的大動脈弁置換術 (AVR) が必要となるがその時点で手術困難な例が多々ある.  目的, 対象, 方法 : 高度ASでAVRハイリスク例にイノウエ・バルーンによる順行性大動脈弁拡張術 (PTAV) を行い短・中期成績を検討した.  結果 : 38症例に42手技を施行, 年齢83±8歳, 女性34例, 身長150±8cm, Japan score 17.0±14.3%であった. 大動脈弁圧較差 (peak-peak) 術前69±32mmHgから術後21±14mmHg, 大動脈弁弁口面積 (Gorlin法) 術前0.6±0.2cm2から術後1.3±0.6cm2へ改善, 局所麻酔で行い術時間は117±26分であった. 合併症は術後30日以内の死亡, 鼠径動静脈瘻, 心タンポナーデ, 硬膜下血腫急性増悪が各1例, 輸血を2例に行った. 大動脈弁閉鎖不全症の軽度悪化が3手技 (7.1%) に認められたが改善例もあった. NYHA分類は術前2.9±0.6から術後1.4±0.5となった. 再狭窄は8例 (21.6%) で4例に再施行し初回と同様の結果を得た. 術後1年以内, 2年以内の死亡は37例中13例 (35.1%) および18例 (48.6%) であった.  結論 : PTAVは高齢, 低身長, 低身体機能者にも低侵襲に施行でき日常活動動作の改善に著効した. 年齢や併存疾患のため限界はあるが生命予後も改善した.
[臨床研究]
  • —圧力—ひずみ弾性率 (Ep) とスティッフネス・パラメータ (β) の超音波測定による評価—
    田中 みどり, 菅原 基晃, 小笠原 康夫, 泉 唯史, 仁木 清美, 梶谷 文彦
    2015 年 47 巻 2 号 p. 157-164
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/15
    ジャーナル フリー
     背景と目的 : 有酸素運動が動脈の硬さを低下させる効果に関する報告はすでにある. しかし, 動脈の硬さを低下させる効果が認められるのに必要な運動の強度, 頻度, 継続期間については明確になっていない. さらに, 従来の報告の結論は脈波速度の変化に基づいているが, 脈波速度は動脈の硬さの間接的な指標である. われわれは, 動脈の硬さの直接的な指標である圧力—ひずみ弾性率 (Ep) とスティッフネス・パラメータ (β) を測定して, 運動の効果を検証した. 方法 : 20名の若年健常者 (21.0±1.0歳) を対象とし, 超音波エコートラッキング法を用いて総頸動脈のEpおよびβを測定した. 運動負荷は, 中等度強度で1日1回, 30分, 1週間に2~3回で8週間行った. 結果 : 8週間継続して運動を行った結果, 収縮期血圧と拡張期血圧には変化はなかったが, 動脈の直径の拍動による変化率は有意に増大し, その結果, Epとβに有意な低下が認められた.
Editorial Comment
[症例]
  • 櫃本 竜郎, 西村 和久, 上谷 晃由, 永井 啓行, 井上 勝次, 鈴木 純, 大蔵 隆文, 檜垣 實男, 大木元 明義
    2015 年 47 巻 2 号 p. 166-171
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/15
    ジャーナル フリー
     症例は75歳, 男性. 失神発作を伴うBrugada症候群に対して2012年9月に植込み型除細動器 (implantable cardioverter defibrillator ; ICD) 移植術を施行した. ICD植込み8カ月後に草刈り機を使用し, 約5時間の草刈り作業を行った. 植込み部位に軽い違和感があったが放置し, 数日後挫創ができていることに気付き近医を受診した. 創部は徐々に拡大し, 数日で創部が開放したためデバイス感染が強く疑われ精査加療目的で当院に入院した. 左前胸部の創部に膿瘍を形成しており, 鑷子で創部を観察すると容易にICD本体が外部と開通していたためデバイス感染と診断した. 入院第2病日にICDを全抜去し, 抗生剤による厳重な感染コントロールを行った後, 反対側からICD再植込み術を施行した. デバイス感染予防には草刈り作業などの物理的刺激の回避も重要と考えられ, デバイス感染の診断・治療・管理についても文献的考察を加えて報告する.
[症例]
  • 三好 徹, 岡山 英樹, 川田 好高, 高橋 龍徳, 重松 達哉, 木下 将城, 原 佳世, 泉 直樹, 日浅 豪, 山田 忠克, 風谷 幸 ...
    2015 年 47 巻 2 号 p. 172-178
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/15
    ジャーナル フリー
     症例は40代男性. 2月某日40°C台の発熱があり, その5日後に間欠性の痙攣を伴う意識消失発作を繰り返すため, 脳炎を疑われ当院救命救急センターに搬送された. モニター心電図上, 完全房室ブロックに伴う意識消失と痙攣発作が出現するため救急外来で経皮的ペーシングを開始し, その後経静脈的一時的ペーシングを施行した. 来院時, インフルエンザA抗原が陽性, 経胸壁心エコー図上, EFは40%でびまん性の壁運動低下を認めていた. 後日, 冠動脈造影を施行したが有意狭窄は認めなかった. 同時に心筋生検を行い, リンパ球を主体とした炎症細胞浸潤, 心筋細胞の断裂, 萎縮, 消失を認めており心筋炎に矛盾しない所見であった. 好酸球や巨細胞は認めなかった. インフルエンザA抗原 (H3N2) のペア血清が有意に上昇しており, A香港型インフルエンザ心筋炎に伴う完全房室ブロックと診断した. 完全房室ブロックは改善せず, 入院7日目に左胸部にMRI対応型恒久的ペースメーカー植込み術を行った. 完全房室ブロック原因精査目的にペースメーカー植込み3カ月後に心臓MRIを撮像したが, 良好な画像が得られ明らかな遅延造影所見は認めなかった.
Editorial Comment
[症例]
  • 岩井 宏治, 林 秀樹, 飛田 良, 木下 妙子, 川口 民郎, 酒井 宏, 堀江 稔
    2015 年 47 巻 2 号 p. 180-186
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/15
    ジャーナル フリー
     症例は65歳, 女性. 右上肢の乏血症状をきたし精査加療目的に入院となった. 右橈骨動脈の触知はできず, 右上腕での血圧測定は不可であった. 造影CTにて右鎖骨下動脈の閉塞を認め, ヒト白血球型抗原-B52が陽性であり, 大動脈炎症候群と診断された. 副腎皮質ホルモンと抗血小板剤の内服に加え, 上肢のリハビリテーションを実施した. 負荷制御装置を用いて上肢のアイソキネティック運動 (回転数30回/分, 15分間) を実施し, また弾性バンドによるレジスタンストレーニングを併用した. 運動療法後には, 上肢の血行改善を目的にホットパックによる温熱療法も行った. 治療9カ月後の造影CTと, 血管造影検査にて右鎖骨下動脈の血管内径の増大・血流改善を認めた.  右鎖骨下動脈狭窄を認めた大動脈症候群症例において, 副腎皮質ホルモンの内服に加え長期間のリハビリテーションの継続が, 狭窄血管の血行改善に寄与できる可能性が示唆された.
[症例]
  • 執行 秀彌, 大原 貴裕, 岩山 忠輝, 舟田 晃, 長谷川 拓也, 神﨑 秀明, 安斉 俊久
    2015 年 47 巻 2 号 p. 187-190
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/15
    ジャーナル フリー
     症例は70歳, 女性. 主訴は意識消失. 大動脈弁閉鎖不全症, 感染性心内膜炎に対してBentall手術 (Prima Plus 21mm, Intergrad 20mm), 右室形成術を施行した. 術後完全房室ブロックと低心機能を認め心臓再同期療法ペースメーカー (Medtronic Consulta CRT-P C3TR01) を留置した. 3カ月に及ぶ長期入院を要した. 退院後, 立位にて調理中に突然の意識消失をきたし, 精査のために入院. 心電図では失神をきたすような不整脈を認めず, 心筋逸脱酵素上昇等異常所見を認めなかった. 経胸壁心エコー図では, 局所壁運動異常や大動脈弁置換弁の異常所見を認めなかった. 頭部単純CT, 脳波検査でも異常所見は認めなかった. 神経調節性失神を疑いヘッドアップチルト試験を施行. ニトロール負荷にて急激な血圧低下, 失神症状を認めた. カルベジロールのα1遮断作用が失神の誘因となった可能性を考慮し, カルベジロールからビソプロロールへ変更した. 変更後ヘッドアップチルト試験を再施行したが, 血圧低下, 失神症状を認めなかった. 以降症状再発なく経過している. 低心機能例に対してβ遮断薬を投与する際には神経調節性失神の副作用も考慮に入れて薬剤選択する必要があると考えられた.
Editorial Comment
Editorial Comment
[症例]
  • 三好 真智子, 村上 究, 中野 顕, 福岡 良友, 森下 哲司, 佐藤 岳彦, 石田 健太郎, 絈野 健一, 天谷 直貴, 荒川 健一郎, ...
    2015 年 47 巻 2 号 p. 193-197
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/15
    ジャーナル フリー
     症例は67歳, 女性. 糖尿病, COPD (慢性閉塞性肺疾患) にて近医に通院していた. 2011年8月初旬より腹痛・下痢を認め, 6日後に冷汗・意識障害をきたし近医に救急搬送となった. JCSⅢ-300で心電図モニター上, 2 : 1の房室ブロックと洞性徐脈 (QRS拍数20回/分) を認めた. 酸素飽和度は40% (室内気) であり, COPDの急性増悪と診断し, 挿管・人工呼吸器管理を開始後に当院へ搬送となった. 硫酸アトロピン静注は著効するも数分間で洞性徐脈から洞停止をきたしたため, 体外式ペースメーカーを挿入した. 血清電解質に異常なく, 冠動脈造影にも異常は認めなかった. 2009年より神経因性膀胱にて臭化ジスチグミン5mg/日を内服しており, また, 血清コリンエステラーゼ値の著明な低下, 身体所見にて縮瞳, 唾液過多, および下痢を認めたことから, コリン作動性クリーゼと診断した. 硫酸アトロピンの持続投与にてコリンエステラーゼの上昇とともに徐脈は改善した. 糖尿病性腎症の進行による腎機能の増悪によって臭化ジスチグミン血中濃度が上昇したために起こったものと考えられた. 徐脈性ショックの診断に際して留意すべき極めて稀な病態とある考え, 報告する.
Editorial Comment
[症例]
  • 朴 美仙, 須佐 建央, 井本 宏治, 鈴木 慎介, 園山 一彦, 河端 哲也, 小田 強
    2015 年 47 巻 2 号 p. 199-205
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/15
    ジャーナル フリー
     急性心筋炎は心筋を炎症のフォーカスとし, 心筋細胞壊死や変性を起こす疾患である. 通常, 心臓全体に炎症が波及するため, 心筋収縮障害や伝導障害が生じる. 今回われわれは急性心房心筋炎で, 多臓器不全に至った1例を経験した. 症例は70歳男性. 胸痛を主訴として来院. 発熱と徐脈を伴っていたが, 他に異常は認めなかった. しかし翌日ショックとなり, 多臓器不全のため永眠された. 病理解剖では心房, 特に洞結節で炎症が著しく徐脈の原因と考えられた. 炎症の存在と不整脈などの心症状を呈した場合には, 急性心筋炎の可能性があり多臓器不全に陥る可能性があるため, 早期から厳重に管理することが必要である.
[症例]
  • 市川 織絵, 西山 浩彦, 瀬川 貴嗣, 冠野 昂太郎, 木下 晴之, 松田 守弘, 田村 律, 川本 俊治
    2015 年 47 巻 2 号 p. 206-210
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/15
    ジャーナル フリー
     症例は, 70歳男性. 糖尿病に対して加療中であったが, 失神の精査にて非持続性心室頻拍を認め, 左前下行枝#6~#7にびまん性の高度狭窄を認めた. アスピリン100mg, クロピドグレル75mg, ランソプラゾール15mgの投薬を開始し, その5日後に経皮的冠動脈形成術 (percutaneous coronary intervention ; PCI) を行い, 同部位にバイオリムス溶出性ステントを留置した. その3日後に亜急性ステント血栓症を発症し, 血栓吸引とバルーン拡張を行い造影良好となった. その後, ヘパリンと硝酸薬の持続点滴を行っていたが, 4日後に再び亜急性ステント血栓症を発症し, 再度, 血栓吸引とバルーン拡張を行った. シロスタゾール200mg, 一硝酸イソソルビド40mgの追加をし, ランソプラゾール15mgは中止してファモチジン40mgに変更した. 以後は症状なく, フォローアップの8カ月後のCAGでもステント再狭窄や血栓症は認めなかった. CYP2C19遺伝子型は*1/*2であった. DAPTを継続していたにもかかわらず短期間のうちにステント血栓症を繰り返した要因として, 小さい最小血管内腔面積, 長い病変長, 複数ステントの病変リスク因子に加え, プロトンポンプ阻害薬 (proton pump inhibitor ; PPI) の使用, 糖尿病, CYP2C19遺伝子の多型など複数の因子によりクロピドグレル抵抗性が引き起こされたことが考えられた.
Editorial Comment
[症例]
  • 太田 啓祐, 礒田 圭, 宮井 伸幸, 中村 玲雄, 澤西 高佳, 木下 法之, 松本 雄賀, 武田 崇秀, 朴 昌禧
    2015 年 47 巻 2 号 p. 212-216
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/15
    ジャーナル フリー
     症例は80歳, 男性. 労作時胸部不快感を主訴に近医を受診し, 冠動脈CT検査で冠動脈左前下行枝に狭窄が疑われたため, 当科に紹介受診となった. 冠動脈造影上, 有意狭窄は認めなかった. 紹介元のCT画像にて瘤状に拡張した肺動脈を認めたため, Swan-Ganzカテーテル検査を実施した. 肺高血圧や左右シャントは認めず, さらに梅毒などの感染症の罹患なく, ベーチェット病などを疑わせる症状ないため, 特発性肺動脈拡張症と診断した. 肺動脈拡張症の症状は認めず, 過去のCT検査所見と比較し, 拡大傾向にないことを確認し, 経過観察とした. 特発性肺動脈拡張症について治療方針は確立しておらず, 拡張した肺動脈に解離が生じた症例報告もあるため, 症状の有無や心臓超音波検査による右心機能評価, CT検査による拡大傾向の有無など定期での観察が必要と考える.
Editorial Comment
[症例]
  • 不破 貴史, 渋井 敬志, 松下 紀子, 大島 杏子, 佐伯 仁, 畑 明宏
    2015 年 47 巻 2 号 p. 218-223
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/15
    ジャーナル フリー
     症例は59歳の女性, 主訴は呼吸困難. 1995年に僧帽弁狭窄症 (原因不明) に対して僧帽弁置換術 (機械弁SJM 27mm) 施行後の患者. 2012年3月に僧帽弁位機能不全による急性心不全の診断で, 再度, 僧帽弁置換術 (機械弁ATS 27mm) が施行された. 術中所見では血栓弁であった. 術後脳梗塞でリハビリ中, 就寝中に呼吸困難感増悪したため, 精査加療目的に転科となった. 心エコーおよび透視でstuck valveを認め, 再び人工弁機能不全と判断した. ワルファリンコントロールは良好 (PT-INR 2.3-4.0) であったが, 以前から好酸球増多 (好酸球30-70%) を認めていた. 再手術から短期間で弁機能不全を認めたことから, 好酸球増多に起因した, 血栓弁による再発性人工弁機能不全と判断した. 全身状態から再々手術は困難と考え, ステロイド投与, ならびに血栓溶解療法を開始した. その結果, 弁の可動性は徐々に改善し, 両方の弁の可動性の改善を認め, 手術を回避しえた. 好酸球増多症は, 原因不明の末梢血中の好酸球の増加を特徴とする疾患である. 過剰な好酸球は心内膜, 心筋へ作用することで, 血栓傾向を助長し, 弁置換術後の患者における再発性人工弁機能不全の原因となることが知られている. 好酸球増多症候群による再発性人工弁機能不全症と診断し, ステロイド投与と血栓溶解療法により, 弁の機能が改善し, 手術を回避しえた極めて稀な症例である.
研究会(第48回 河口湖心臓討論会)
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