心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
[症例]
徐脈性ショックの初期診断に難渋したコリン作動性クリーゼの1例
三好 真智子村上 究中野 顕福岡 良友森下 哲司佐藤 岳彦石田 健太郎絈野 健一天谷 直貴荒川 健一郎宇隨 弘泰李 鍾大夛田 浩
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 47 巻 2 号 p. 193-197

詳細
抄録

 症例は67歳, 女性. 糖尿病, COPD (慢性閉塞性肺疾患) にて近医に通院していた. 2011年8月初旬より腹痛・下痢を認め, 6日後に冷汗・意識障害をきたし近医に救急搬送となった. JCSⅢ-300で心電図モニター上, 2 : 1の房室ブロックと洞性徐脈 (QRS拍数20回/分) を認めた. 酸素飽和度は40% (室内気) であり, COPDの急性増悪と診断し, 挿管・人工呼吸器管理を開始後に当院へ搬送となった. 硫酸アトロピン静注は著効するも数分間で洞性徐脈から洞停止をきたしたため, 体外式ペースメーカーを挿入した. 血清電解質に異常なく, 冠動脈造影にも異常は認めなかった. 2009年より神経因性膀胱にて臭化ジスチグミン5mg/日を内服しており, また, 血清コリンエステラーゼ値の著明な低下, 身体所見にて縮瞳, 唾液過多, および下痢を認めたことから, コリン作動性クリーゼと診断した. 硫酸アトロピンの持続投与にてコリンエステラーゼの上昇とともに徐脈は改善した. 糖尿病性腎症の進行による腎機能の増悪によって臭化ジスチグミン血中濃度が上昇したために起こったものと考えられた. 徐脈性ショックの診断に際して留意すべき極めて稀な病態とある考え, 報告する.

著者関連情報
© 2015 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top