心臓
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[症例]
FDG-PETが肺動脈腫瘍と肺動脈血栓塞栓症の鑑別に有用であった1例
巴里 彰吾永田 健一郎二川 圭介田中 博之
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2015 年 47 巻 8 号 p. 1000-1006

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抄録

 症例は53歳, 女性. 2012年3月ごろから咳嗽と背部痛が出現し, 次第に増悪したため近医を受診した. X線で腰椎圧迫骨折を認め, その後のMRI検査で胸腰椎と仙骨に多発病変を認めたため, 転移性骨腫瘍が疑われた. 原発巣の精査を行う目的で造影CTを施行したところ, 肺動脈に腫瘤影を認め, 肺動脈腫瘍や肺動脈血栓塞栓症が疑われ精査目的に当院紹介となった. 経胸壁心エコーでは右心負荷所見と右室流出路から肺動脈を行き来する可動性の腫瘤を認めた. MRIやGaシンチを施行するも腫瘍と血栓の鑑別は困難であった. 病変の生検は末梢塞栓などのリスクもあることから, 肺動脈内の血栓と腫瘍の鑑別を行う目的にFDG-PETを行った. その結果, 腫瘤はSUVmax値が3.3と比較的低値であり, 血栓の可能性が疑われた. その後, 抗凝固薬内服を行い一時退院したが, 約3カ月後に心不全で再入院し, エコーで肺動脈内腫瘤は著変なく, 右室圧は高値のままであった. また腰椎に転移性骨腫瘍が疑われており, 原発巣も不明のままであったことから, 肺動脈内腫瘍の可能性も完全には否定できず, 診断と治療を行う目的に開胸での外科的処置を行った. 術後の病理では腫瘍は器質化した血栓であった. 今回, 肺動脈内腫瘍と肺血栓塞栓症の鑑別に苦慮したが, FDG-PETが診断に有用であった1例を経験した.

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