2015 年 47 巻 SUPPL.2 号 p. S2_124-S2_130
症例は46歳男性. 36歳時に急性心筋梗塞を発症し右冠動脈に対しPCIを施行した既往あり. 約1年前より動悸を自覚し, 左脚ブロック, 上方軸型の心室期外収縮 (PVC) を認めカテーテルアブレーションを施行した. 右心室のvoltage mapでは右室後中隔基部に低電位領域 (LVA) を認め, 陳旧性心筋梗塞 (OMI) 領域と考えられた. PVCの早期性をmappingしたところ, LVA下縁にて, PVCのQRSに32ms先行する電位を記録し, ペースマップはPVCのQRS波形に完全な一致を認めた. 同部位に対する通電でPVCは消失したが, 約1時間後にPVCが再発した. 再発後PVCの最早期興奮部位は, LVA上縁に存在するHis束電位記録部位で, QRSに60ms先行するfractionated potentialが記録された. 同部位でのペースマップはHis束を捕捉した波形となり, 房室ブロックのリスクがあるため通電を行わなかった. このHis束電位記録部位のわずかに心尖部側の早期性良好の部位で通電を施行しPVCの根治が得られた. His束近傍起源PVCがOMI組織に影響され, fractionated potentialとHis束近傍起源PVCに非典型的な心電図波形を呈したものと推測された.