2015 年 47 巻 SUPPL.2 号 p. S2_131-S2_139
報告する2症例はともに陳旧性下壁心筋梗塞に左軸偏位, 左脚ブロック型の心室頻拍 (VT : ventricular tachycardia) を合併した70歳代男性. 症例1は頻発する心室性期外収縮 (VPC : ventricular premature contraction) と非持続性VTがあり, 3次元マッピングシステムCARTO® system with CARTO SOUND® integrationを用いて高周波カテーテルアブレーションを行った. 心内エコーSOUNDSTAR®で左室基部中隔よりの後下壁に健常部との境界が明瞭な心室瘤が確認された. reentry circuitは同定できなかったがpace mappingで心室瘤と僧帽弁輪間に良好なpace mapが得られる部位が複数あったためscarと僧帽弁輪間にリエントリーの必須伝導路 (critical pathway) があると考えた. 心室瘤から僧帽弁輪まで線状焼灼したところ途中でVPCは消失した.
症例2は持続性心室頻拍のため埋め込み型除細動器 (ICD) が頻回作動し治療を行った. 治療中はVTを誘発できなかったが左室下後壁に心室瘤が確認され, 僧帽弁輪側の瘤辺縁部で良好なpace mapが得られた. Mitral isthmus dependent VTと考え, 心室瘤内部から僧帽弁輪まで線状焼灼を加えた. 術後1年以上VTの再発を認めていない.
2例ともにreentry circuitを同定できなかったが心内エコーで得られた壁運動異常や心筋菲薄化等の所見から, 心室瘤の範囲, 弁輪との位置関係を正確に把握し, pace mappingにてcritical pathwayを想定できた. カテーテル先端と心筋組織のコンタクトを心内エコーで確認しながら通電できたことも優れた治療効果につながった要因であると考えられる.