2015 年 47 巻 SUPPL.2 号 p. S2_44-S2_49
房室回帰性頻拍 (AVRT) は減衰伝導特性を持たない副伝導路を介するshort R-P'頻拍であるが, permanent form of junctional reciprocating tachycardia (PJRT) は主に右後中隔に存在する減衰伝導特性を持つ副伝導路を介するlong R-P'頻拍である. PJRTはincessant typeで抗不整脈薬抵抗性のことが多いが, カテーテルアブレーションによる根治が期待できるため成人領域においては治療の第一選択となっている.
症例は10カ月の男児. 熱性痙攣を契機に発作性上室頻拍 (PSVT) と診断された. ATPで頻拍は停止するがすぐに再発しベラパミルで洞調律に復した. 高位右房期外刺激ではjump-up現象は認めず, PSVTが誘発された. 頻拍中の最早期心房興奮部位は左房遠位電極付近であった. 右室連続刺激中にATPを静注したところ室房伝導の最早期心房興奮部位がHis束興奮部位から左房遠位電極付近に変化し, かつWenckebach型の室房伝導を認めた. 右室期外刺激では左房遠位電極までの逆伝導は刺激間隔の短縮とともに延長し, この副伝導路は減衰伝導特性を有することが証明された. 頻拍中のCARTOによるactivation mapでは, 僧帽弁4時に早期興奮部位を認め, 同部位への通電で副伝導路の焼灼に成功した. 以後発作は再発していない.