心臓
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[症例]
総合感冒薬服用後に胸痛, 心筋障害を繰り返した若年男性の1例
庄司 圭佑横井 宏和柳内 隆西川 真理恵伊藤 大輔木村 雅喜木下 英吾白石 淳兵庫 匡幸島 孝友沢田 尚久河野 義雄
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2016 年 48 巻 1 号 p. 70-76

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抄録

 症例は12年前に感冒後の胸痛・心筋障害にて入院歴のある28歳男性. 感冒にて総合感冒薬を内服し2日後の早朝に胸痛が出現したため当院を受診した. 心電図にてⅡ, Ⅲ, aVF, V3−6誘導でST上昇, 心臓超音波検査にて心尖部から後側壁の壁運動低下を認めた. 急性冠症候群の疑いで緊急冠動脈造影を行ったが有意狭窄を認めなかった. 入院後のpeak CPKは1139IU/Lで胸痛と心電図変化は徐々に改善した. 本症例では12年前にも同様の経過と臨床所見を呈しており, 急性心筋炎やたこつぼ心筋症よりも冠動脈攣縮による心筋障害が強く疑われた. 第3病日の心筋シンチグラフィでは心尖部を中心とした後側壁領域の心筋血流と心筋脂肪酸代謝の乖離所見を認め, 冠攣縮による心筋障害と矛盾しない所見であった. 第6病日に実施したエルゴノビン誘発試験で冠攣縮は陰性であったが, 左冠動脈の造影遅延を認め, 今回と過去の臨床経過と併せて冠微小血管攣縮と診断した. また12年前にも同様の総合感冒薬を内服した後に胸痛・心筋障害を呈しており, 含有成分のうちエフェドリンが冠微小血管攣縮の誘因となった可能性が示唆された. 総合感冒薬服用後に胸痛, 心筋障害を繰り返した病態として, 冠微小血管攣縮が存在することも念頭において治療にあたる必要があると考えられた.

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