心臓
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[臨床研究]
心臓血管外科周術期における医療関連感染リスク因子の解析
前川 慶之阿部 修一内田 徹郎中村 健貞弘 光章森兼 啓太
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2016 年 48 巻 7 号 p. 735-746

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抄録

 背景 : 心臓血管外科術後の最大の合併症は医療関連感染 (HAI) であり, 周術期における適切な感染制御が生命予後改善に不可欠である. 本研究の目的は, 心臓血管外科術後患者における医療関連感染のリスク因子を解析することである.

 方法 : 対象は2007年1月から2011年12月まで, 山形大学医学部附属病院で心臓血管外科手術を行われた成人連続644例. 術後に発症した医療関連感染をCDCのサーベイランス基準に基づき診断し, リスク因子の解析を行った.

 結果 : 644例中159例 (24.6%) において何らかの医療関連感染を合併した. 主たる内訳は手術部位感染32例 (4.9%), 肺炎80例 (12.4%), 尿路感染34例 (5.2%) であった. 感染群の在院死亡率は有意に高かった (12.6%対2.8%, OR 4.8, 95%信頼区間2.4-9.8, p=0.0001). 多変量解析により80歳以上 (OR 2.96, p=0.0011), 術前の心不全 (OR 1.84, p=0.024), 維持透析 (OR 3.66, p=0.0051), 長時間手術 (>440分 (75%ile値), OR1.79, p=0.0286) 胸部大動脈手術 (オッズ比3.64, p=0.0005) が独立したリスク因子として抽出された.

 結論 : これら高リスク患者に対する積極的な介入が医療関連感染の予防に有効である可能性が示唆された.

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© 2016 公益財団法人 日本心臓財団
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