心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
[症例]
Carney複合の一家系
中島 孝岩佐 将充金森 寛充牛越 博昭川崎 雅規西垣 和彦小椋 弘樹石田 成吏洋島袋 勝也宮崎 龍彦竹村 博文湊口 信也
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 48 巻 7 号 p. 774-780

詳細
抄録

 Carney複合 (Carney complex ; CNC) は, 皮膚色素沈着, 副腎皮質腫瘍や下垂体腫瘍などの内分泌機能亢進で特徴づけられる症候群で常染色体優性遺伝疾患である. 心臓腫瘍を高率に合併し, 孤発性心臓腫瘍と比較し多発性で再発率が高い. 遺伝子検査でtype 1α regulatory subunit of cAMP-dependent protein kinaseのc. 597del C (p. Phe200LeufsX6) 変異が確認され, CNCと診断された一家系3症例を報告する.

 症例1は65歳女性. 耳下腺腫瘍摘出術および成長ホルモン産生下垂体腺腫 (GHoma) に対する下垂体腫瘍摘出術の既往がある. 2011年の経胸壁心エコー (transthoracic echocardiography ; TTE) で22×14mm大の左房内腫瘍を認めたが手術を拒否した. 2015年のTTEで同腫瘍の増大34×17mmを認めた. またその時点で新たに13×11mm大の右房内腫瘍を認めた. 多発性心腔内腫瘍に対して手術を承諾し, 摘出術を施行された.

 症例2は症例1の三女35歳. GHomaおよび原発性色素沈着性結節性副腎皮質病変 (primary pigmented nodular adrenocortical disease ; PPNAD) 既往がある. 2011年のTTEで50×30mm大の左房内腫瘍を認め, 摘出術を施行された. また術前経食道心エコーでは指摘されなかった5mm大の別の左房内腫瘍を術中直視下に認め, 摘出された.

 症例3は症例1の次女37歳. GHomaに対する下垂体腫瘍摘出術の既往およびPPNADがある. 今のところ心臓腫瘍は認めていない.

 2症例の4腫瘍はいずれも病理学的には粘液腫であった. CNCは遺伝性疾患であり家族内発症し, 高率に心臓腫瘍を合併する. またCNCに合併する心臓腫瘍は再発率が高い. 心臓腫瘍未発症の家族も含め, 永年の注意深い経過観察が必要である.

著者関連情報
© 2016 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top