TMSを用いてヒトの皮質機能を評価する方法の中から,神経伝達物質の機能との関連が比較的強く,精神疾患の病態の検討や薬効評価の予測などへの応用が期待されるものをとりあげて紹介した。Cortical silent period の後期成分は運動皮質内のGABA-Bを介した皮質内抑制機構を反映し,統合失調症の陰性症状との逆相関や抗精神病薬による違いが示されている。統合失調症での障害が多数報告されている運動皮質への2連発磁気刺激による短潜時皮質内抑制は,主に運動皮質のGABA-Aを介したGABA性介在ニューロンの機能を反映しており,GABA系の機能異常と関連した統合失調症の病態の検討での成果が期待される。Short-latency afferent inhibition は,主に中枢性のコリン系神経伝達の機能を反映しており,認知症の診断や薬効評価の予測などの臨床応用を目指した今後の検討が期待される。