心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
第28回 臨床不整脈研究会
房室結節二重伝導路と2本の副伝導路をもち複数の頻拍が誘発されたWPW症候群の1例
高橋 啓子奥村 恭男永嶋 孝一園田 和正古川 力丈佐々木 直子磯 一貴黒川 早矢香大久保 公恵中井 俊子渡辺 一郎平山 篤志
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 48 巻 SUPPL.2 号 p. S2_6-S2_14

詳細
抄録

症例は41歳男性.B型WPW症候群に伴うwide QRS頻拍に対し,電気生理学的検査を施行した.心室連続刺激中の心房最早期興奮部位はHis束電位記録部位であったが,心室早期刺激で左側後壁副伝導路の存在が示唆された.心室早期刺激でclinical wide QRS頻拍(SVT1)が誘発され,右側側壁副伝導路を順行,房室結節を逆行する逆行性房室回帰性頻拍と診断した.SVT1は室房伝導時間が短縮し,His束電位が心室(V)波に重なるSVT2へと変化した.その間,His –心房(A)波間隔は一定であったことからSVT1の室房伝導は機能的右脚ブロックであったのに対し,SVT2ではそれが解除されたと考えられた.さらにその後の心室早期刺激でwide QRS頻拍SVT3が出現し,これは室房伝導の順序は変化しないまま,narrow QRS頻拍SVT4に変化した.これらは房室結節を順行,左房後壁副伝導路を逆行する順行性房室回帰性頻拍と診断した.wideからnarrowへの変化はCoumel現象による左脚ブロックが解除されたためと考えられた.さらに副伝導路間を旋回するSVT5と,通常型slow-fast房室結節回帰性頻拍(SVT6)も誘発された.以上より,順伝導のみの右側副伝導路,潜在性左側副伝導路,房室結節遅伝導路を焼灼し終了した.

著者関連情報
© 2016 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top