心臓
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研究会(第11 回心不全陽圧治療研究会)
Stage D 心不全におけるAdaptive Servo Ventilation 治療経
奥村 貴裕
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2017 年 49 巻 10 号 p. 1087-1091

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抄録

 症例は40歳男性.4年前に完全房室ブロックに対しペースメーカーを装着した.当時の左室駆出率は40~50%程度,心筋保護薬の内服が開始された.7か月前,心不全の再増悪にて入院し,CRT-Pへのアップグレードが行われた.左室駆出率は10%台,左室拡張末期径は80 mmであった.今回,再び心不全増悪にて入院となり,重症心不全治療目的に当院へ転院となった.ドブタミン,ミルリノンおよびフロセミドの持続静注にて治療を開始したが,強心薬の減量により,血圧低下および肺うっ血の増悪を認めたため,Adaptive Servo Ventilation(ASV)を導入した.さらなる血圧の低下を認めることなく安定した尿流出が得られ,ドブタミンの減量・中止,β遮断薬の増量が得られた.これにより,強心薬の離脱が可能となり,退院へと至った.その後,再入院することなく良好な経過であったが,2年半後に植込み型補助人工心臓の装着を余儀なくされた.ASV治療の導入により補助人工心臓非装着で貴重な時間的猶予を家族とともに共有できた.重症心不全に対するASVの有用性については,未だ意見の一致を見ず,確立していない.エンドポイントの設定によっては,有用な手段のひとつと考えられ,患者群の同定や管理方法などさらなるエビデンスの集積が望まれる.

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© 2017 公益財団法人 日本心臓財団
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