心臓
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[症例]
腋窩─大腿動脈バイパス術を施行した成人型大動脈縮窄症の1
佐藤 晃一高野 隆志津田 晃洋緑川 博文
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2017 年 49 巻 12 号 p. 1234-1239

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抄録

 症例は67歳男性,幼少期より高血圧,両下肢冷感,間歇性跛行を認めた.成人後も高血圧は持続,脳出血,脳梗塞を発症,間歇性跛行が悪化し下肢血行障害にて当院紹介となった.既往歴,現病歴および,胸部X線,胸部造影CTにて成人型大動脈縮窄症と診断した.成人型大動脈縮窄症に対しては通常縮窄部切除と人工血管置換術が施行される,本症例は脳血管疾患による嚥下障害,ADL低下を認め,開胸操作を伴う手術はさらなるADL悪化が懸念された.そのため非解剖学的バイパス術(腋窩─大腿動脈バイパス術)を施行した.術後高血圧は改善され下肢冷感は消失したが,間歇性跛行はADLが悪く改善を確認できなかった.大動脈縮窄症に対する非解剖学的バイパス術の問題点は縮窄部を残すことによる遠隔期の動脈瘤化である.本症例は術後5年時の胸部造影CTにてバイパスの開存と下肢血流の維持を確認した.動脈瘤の発症は認めないが,縮窄部より末梢で大動脈全周に壁在血栓を認めること,上下肢の血圧差が残存していることなど,経過観察が必要である

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