心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
49 巻, 12 号
選択された号の論文の25件中1~25を表示しています
OpenHEART
HEART’s Selection(循環器の最先端基礎研究から臨床応用へ)
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 飯田 浩司, 深井 隆太, 可児 久典, 下郷 卓史, 河住 亮, 小谷 典子, 児島 昭徳, 只腰 雅夫, 大橋 壮樹
    2017 年 49 巻 12 号 p. 1219-1225
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2019/01/17
    ジャーナル フリー

     漏斗胸の患者が胸痛などの胸部症状を高率に訴えることは十分に認知されていない.漏斗胸患者の自覚症状について検討し,冠攣縮性狭心症として加療されていた2例について詳報する.

     手術を施行した漏斗胸患者273例(4~56,平均15.5±9.8歳)において手術前に身体的な症状を訴えたのは113例(41.4%)であった.15歳以下の小児155例では44例(28.4%)が身体症状を呈したが,16歳以上の118例では69例(58.5%)とその割合は増加した.16歳以上の漏斗胸患者では28.5%が胸痛・胸部圧迫感,26.3%が呼吸困難,11.9%が動悸を訴え胸部症状が増加した.胸痛の性質,強さ,誘因,出現時刻,持続時間などは症例によってさまざまであり,同一症例でも再現性に乏しかった.全例に漏斗胸手術である胸肋挙上術変法を施行し症状は軽快,消失した.

     症例1:56歳女性.出生時から前胸部中央下部に陥凹を認めた.約20年前に胸痛が出現し冠攣縮性狭心症と診断され内服していたが,胸痛は続いた.呼吸困難が増悪したために来院した.胸肋挙上術を施行し症状は消失した.

     症例2:31歳女性.前胸部右側に高度の陥凹を認めた.約2年前から胸痛が増悪し冠攣縮性狭心症と診断を受け内服を開始したが胸痛は続き呼吸困難も出現した.胸肋挙上術を施行し症状は消失した.

     成人の漏斗胸患者は高率に胸部症状を訴え,冠攣縮性狭心症や他の心疾患との鑑別に注意を要することがある.これらの身体症状は胸肋挙上術によって軽快,消失した

Editorial Comment
[臨床研究]
  • 佐藤 公一, 浪打 成人, 杉江 正, 瀧井 暢, 牛込 亮一, 加藤 敦, 下川 宏明
    2017 年 49 巻 12 号 p. 1227-1233
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2019/01/17
    ジャーナル フリー

     背景:心血管系疾患に対する抗血栓療法においては血栓性イベント発症リスクと出血性イベント発症リスクのバランスを考慮する必要がある.出血性合併症として消化管出血は日常経験することが多く,死亡リスクを上昇させることが報告されている.抗血栓薬を内服していた消化管出血症例の特徴と施行されていた抗血栓療法および妥当性について調査した.

     方法:2015年1月から2016年6月までに消化管出血で当院救急外来を受診した症例を対象とした.抗血栓薬内服群と非内服群を比較,内服群での抗血栓薬の種類および内服に至った背景となる疾患について確認した.

     結果:消化管出血患者268例のうち96例(36%)が少なくとも1剤の抗血栓薬を内服していた.抗血栓薬内服群は非内服群に比較して高齢であり,心房細動・心筋梗塞既往・冠動脈形成術既往・脳梗塞既往が有意に多かった.抗血小板薬は73例(27%)に,抗凝固薬は27例(10%)に投与されていた.抗凝固薬を内服していた症例はすべて血栓塞栓症予防を目的とする背景疾患を有していたが,抗血小板薬を内服していた症例のうち16例は心血管疾患二次予防を目的とする背景疾患を同定できず,その多くをアスピリンが占めていた.

     結論:消化管出血による緊急入院患者において,出血性リスクの増大にもかかわらず心血管疾患二次予防を目的としない抗血小板薬の投与が約2割の症例で施行されていた.

[症例]
  • 佐藤 晃一, 高野 隆志, 津田 晃洋, 緑川 博文
    2017 年 49 巻 12 号 p. 1234-1239
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2019/01/17
    ジャーナル フリー

     症例は67歳男性,幼少期より高血圧,両下肢冷感,間歇性跛行を認めた.成人後も高血圧は持続,脳出血,脳梗塞を発症,間歇性跛行が悪化し下肢血行障害にて当院紹介となった.既往歴,現病歴および,胸部X線,胸部造影CTにて成人型大動脈縮窄症と診断した.成人型大動脈縮窄症に対しては通常縮窄部切除と人工血管置換術が施行される,本症例は脳血管疾患による嚥下障害,ADL低下を認め,開胸操作を伴う手術はさらなるADL悪化が懸念された.そのため非解剖学的バイパス術(腋窩─大腿動脈バイパス術)を施行した.術後高血圧は改善され下肢冷感は消失したが,間歇性跛行はADLが悪く改善を確認できなかった.大動脈縮窄症に対する非解剖学的バイパス術の問題点は縮窄部を残すことによる遠隔期の動脈瘤化である.本症例は術後5年時の胸部造影CTにてバイパスの開存と下肢血流の維持を確認した.動脈瘤の発症は認めないが,縮窄部より末梢で大動脈全周に壁在血栓を認めること,上下肢の血圧差が残存していることなど,経過観察が必要である

Editorial Comment
[症例]
  • 尾上 紀子, 林 秀華, 高橋 佳美, 山中 信介, 藤田 央, 山口 展寛, 石塚 豪, 篠崎 毅
    2017 年 49 巻 12 号 p. 1241-1247
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2019/01/17
    ジャーナル フリー

     症例は40歳,女性.5歳時,動脈管開存症に対して,コイル塞栓術を施行する際に三尖弁を損傷し,13歳時に生体三尖弁置換術を施行された.抗凝固療法を継続していたが,32歳時に挙児希望のため中止した.34歳時に心房粗動が出現した.37歳時に右房血栓症,右心不全のため入院となった.抗凝固療法によって血栓は消失した.再弁置換術も検討したが,手術のリスクが不明であることと,将来,再々弁置換術が必要になる可能性も考慮して,内科治療を選択した.しかし,その後も右心不全症状は持続し,40歳時に2回目の入院となった.この時点の心臓超音波検査にて生体三尖弁最大流入速度の上昇,圧半減時間の延長,右房右室間平均圧較差の上昇,三尖弁逆流中等症を認め,生体弁機能不全の指標に合致しており,初回三尖弁置換術から27年後に生体弁による再弁置換術を行った.術後完全房室ブロックのためにペースメーカを必要とした.その後の右心不全のコントロールは良好である.

     左心や他の弁機能異常を合併していない単独三尖弁手術の予後についての報告は非常に少なく,三尖弁位生体弁の耐久性には個体差が大きいことから,再弁置換術のタイミングには苦慮することが多い.本症例では,心臓超音波検査における経時変化の詳細な検討が,その時期を決定するのに有用であった.

Editorial Comment
[症例]
  • 吉田 雅博, 水野 智章, 余語 美奈, 鶴見 尚樹, 加藤 寛之, 岡田 卓也, 村上 央, 加田 賢治, 坪井 直哉
    2017 年 49 巻 12 号 p. 1249-1254
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2019/01/17
    ジャーナル フリー

    症例は66歳の女性.既往歴は体質性黄疸と慢性無痛性甲状腺炎.倦怠感と腹部膨満感を主訴に来院,画像検査で中等量の心囊水と胸・腹水貯留を認め,精査目的で入院した.各種血液,画像精査で悪性腫瘍,甲状腺機能低下症,膠原病等を認めず,病状の改善がないため,心囊穿刺と穿刺前後の左室右室同時圧測定を施行した.右室圧波形はdip and plateauで穿刺後も拡張期圧低下を認めなかったため,effusive constrictive pericarditisの診断に至った.心囊液の結核菌Polymerase chain reaction:PCRは陰性だったが,adenosine deaminase:ADA高値であることから結核性心膜炎を考慮し,抗結核薬を開始した.治療開始3週間後の右心カテーテル検査では右室拡張末期圧低下,胸水や浮腫の改善を認めた.

     Effusive constrictive pericarditisは臓側心外膜の硬化と心囊水貯留をきたす疾患で,急性心膜炎を起こす原因疾患すべてが原因となりうる.結核性であっても心囊水の結核菌塗沫,PCR,培養の陽性率は低い.抗結核薬治療の効果判定に右心カテーテル検査が有用であった.

[症例]
  • 中井 秀和, 野村 佳克, 松森 正術, 村上 博久, 吉田 正人, 向原 伸彦
    2017 年 49 巻 12 号 p. 1255-1259
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2019/01/17
    ジャーナル フリー

     冠動脈瘤は,冠動脈造影検査施行例の0.3~4.9%の頻度と報告され,稀な疾患である.同様にバルサルバ洞動脈瘤も先天性心疾患の0.1~3.5%の頻度と報告され,稀である.バルサルバ洞から拡大した冠動脈瘤の報告は少ない.今回,我々は,右冠動脈入口部から拡大し,バルサルバ洞動脈瘤との鑑別を要した巨大冠動脈瘤を経験した.手術はバルサルバ洞動脈瘤に準じてパッチ閉鎖修復を必要とした.巨大冠動脈瘤の診断においては,3D造影CTが有用であった.文献的考察を加えて報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 堀内 至, 竹内 利治, 伊達 歩, 木谷 祐也, 杉山 英太郎, 簑島 暁帆, 坂本 央, 田邊 康子, 赤坂 和美, 佐藤 伸之, 川村 ...
    2017 年 49 巻 12 号 p. 1261-1266
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2019/01/17
    ジャーナル フリー

    症例は51歳,男性.6歳時に心疾患の指摘があり,学童期より激しい運動時にチアノーゼを認めることがあったが経過観察をしていた.数日前より咳嗽,発熱,呼吸困難が出現し,近医を受診したところ著明な低酸素血症を認め,胸部X線,CT検査より肺炎および心不全が疑われ同院に緊急入院した.心エコーを行ったところ心室中隔欠損(VSD)+肺動脈閉鎖(PA)が認められ,体外式膜型人工肺(ECMO)で呼吸管理の下,精査治療を目的に当院へ搬送された.集中治療室にて集学的治療を行い,心不全および呼吸不全は順調に改善した.造影CTでは下行大動脈より右へ3本,左へ1本の主要体肺動脈側副血行路(MAPCAs)が認められ,心臓カテーテル検査にて圧測定を行ったところ,右中MAPCAの平均圧は36 mmHg,左MAPCAおよび右上と右下MAPCAは平均圧で28~29 mmHgであった.本症例におけるMAPCAの外科的統合は解剖学的に困難であり,また患者は手術を希望されず,在宅酸素療法を導入したところ症状の改善を認めたため,外来で経過観察する方針となった.MAPCAsを伴ったVSD+PAの非手術成人例は稀であり報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 戸口 幸治, 森村 隼人, 王 志超, 池田 司, 福田 尚司, 保坂 茂
    2017 年 49 巻 12 号 p. 1269-1273
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2019/01/17
    ジャーナル フリー

     巨大冠動脈瘤を合併する冠動脈肺動脈瘻は比較的稀な疾患である.通常,有症状時は虚血症状や心不全症状が出現することが多いが,小さな瘤においても破裂の報告があり,積極的治療が望ましいとされている.症例は72歳女性.意識消失で救急搬送された.冠動脈肺動脈瘻,冠動脈瘤,大動脈肺動脈瘻,心タンポナーデと診断し,心囊ドレナージ術後に緊急手術を施行した.出血は瘻破裂によるものと診断し,人工心肺使用,心停止下に右冠動脈肺動脈瘻結紮術,左冠動脈肺動脈瘻破裂部周囲の瘻縫合閉鎖術を行った.術後経過は順調で,術後15日に軽快退院した.術後3カ月時に残存瘻へのコイル塞栓術を行った.

第36回 関東川崎病研究会
feedback
Top