2017 年 49 巻 6 号 p. 583-589
60歳,女性.主訴は労作時呼吸困難と下腿浮腫.2015年9月コントロール不良の糖尿病,感音性難聴等の臨床症状からMitochondrial myopathy,Encephalopathy,Lactic acidosis and Stroke-like episodes(MELAS)が疑われ,ミトコンドリア遺伝子3243点変異を認め,確定診断された.11月心不全で入院し,心エコーでは左室心筋重量増加とびまん性壁運動低下,99mTc-sestamibi安静心筋シンチグラフィでは左室前壁中隔領域に集積低下,MRIでは心筋中層に淡い線状の遅延造影を認めた.また心臓カテーテル検査で冠動脈は正常,同時に行った左室心筋生検(HE染色)にて心筋細胞の肥大と空砲変性がみられた.β遮断薬や利尿薬にて治療を開始し一旦退院したが,2016年1月心不全増悪にて再入院となった.本症例はMELASに合併した心筋症の1例と考えられた.