心臓
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[症例]
著明な肺高血圧症および心不全を合併し,急性期治療に難渋した肥満低換気症候群の1例
飯田 倫公谷本 匡史西原 大裕辻 真弘市川 啓之横濱 ふみ大塚 寛昭山本 和彦川本 健治田中屋 真智子片山 祐介櫻木 悟
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2017 年 49 巻 8 号 p. 869-875

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抄録

 症例は45歳女性.近医にて,うつ病に対して抗精神病薬を処方されていた.最近の1年間で体重が約40 kg増加,体動困難となり,ベッド上でほぼ寝たきりの状態となっていた.20XX年3月末,数日前からの呼吸困難を主訴に当院救急外来に搬送された.体重107 kgと高度肥満あり,酸素6 L/分投与下にても,低酸素血症および高二酸化炭素血症を認めた.明らかな肺疾患は認めず,肥満低換気症候群と診断した.入院直後からNPPVにて加療開始したが,呼吸状態は改善しないため,気管内挿管の上,人工呼吸器管理を行った.スワンガンツカテーテル検査にて,肺動脈圧および肺動脈楔入圧の上昇を認めた.両心不全の状態であり,ドブタミンおよびフロセミドを併用し加療を行った.その後,十分な尿量が得られ,徐々に呼吸状態は改善し,それに伴い肺動脈圧は低下した.第4病日に気管切開を施行し,第7病日にICU退室となった.第11病日に人工呼吸器から離脱した.慢性期には,減量目的にて食事療法およびレジスタンストレーニングを含めた運動療法を行い,体重は86 kgまで低下した.第78病日に気管切開孔を閉鎖し,第88病日に独歩退院となった.

 本症例のように肥満低換気症候群に肺高血圧症および重症心不全を合併した場合には,治療開始早期から人工呼吸管理など侵襲的な治療も念頭に置く必要がある.また,慢性期には食事療法とレジスタンストレーニングを含めた運動療法が,減量に有効であった.

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© 2017 公益財団法人 日本心臓財団
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