心臓
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49 巻, 8 号
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OpenHEART
HEART’s Selection(Cardio-Oncologyの現状と課題)
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 肥田 親彦, 蒔田 真司, 安孫子 明彦, 中村 元行
    2017 年 49 巻 8 号 p. 822-827
    発行日: 2017/08/15
    公開日: 2018/08/15
    ジャーナル フリー

     目的:これまで大動脈解離の発症に関わる外的要因の検討は少ない.本研究では,当院での急性大動脈解離(AD)症例を対象に,身体活動性や気象要因とAD発症の関連性を検討した.

     方法:2004年1月から2012年12月までのAD259例(Stanford A型106例,B型153例,平均年齢66±13歳)を対象に発症時の身体活動状況を調査した.また,調査期間2923日分の気象情報を気象庁ホームページから入手し,AD発症日の特徴を検討した.

     結果:労作時の発症が安静時より多く(66% vs. 20%),日中の発症が夜間より多かった(62% vs. 36%).また,月別発症件数の比較では秋冬季に多かった.発症日と非発症日の気象情報を比較すると,1日平均海面気圧は1015.6±6.7 hPa vs. 1013.7±7.0 hPa(p<0.01)で発症日に高く,1日平均気温は7.6±8.8℃ vs. 10.9±9.5℃(p<0.01)で発症日に低値だった.10月から3月の秋冬季に発症した例に限定した検討でも同様の結果が得られた.

     結語:ADは秋冬季の低温環境や,高気圧環境で発症しやすく,これには寒冷による循環動態の変化と,高気圧等の好気象条件の日に身体活動性が高まることが関連している可能性がある.

[症例]
  • 大関 道薫, 渡辺 創太, 高橋 秀明, 藤阪 智弘, 藤田 修一, 柴田 兼作, 武田 義弘, 宗宮 浩一, 星賀 正明, 石坂 信和
    2017 年 49 巻 8 号 p. 828-833
    発行日: 2017/08/15
    公開日: 2018/08/15
    ジャーナル フリー

     症例は30代女性.3週間前に外傷により左膝前十字靭帯断裂をきたし,ほとんど外出せず座位で過ごすことが多かった.その後,徐々に増悪する呼吸困難を自覚し近医を独歩で受診した.12誘導心電図で右心負荷所見を認め,肺塞栓症の疑いで当院に精査入院となった.造影CTで両肺動脈および左浅大腿静脈近位部から膝窩静脈にかけて血栓像を認め,骨盤内に11 cm大の子宮筋腫を認めた.腎静脈下に回収可能型下大静脈フィルターを挿入し,未分画ヘパリンによる抗凝固療法を開始した.入院第7病日の造影CTで,下大静脈フィルターの血栓閉塞を認めた.ウロキナーゼ18万単位/日の全身投与を開始するも,血栓のさらなる増大を認めたため第13病日にカテーテル血栓溶解療法を施行した.左膝窩静脈よりパルススプレーカテーテルを下大静脈フィルター部まで挿入し,ウロキナーゼ18万単位/回を4回/日,局所投与した.その後血栓は減少し,第21病日にパルススプレーカテーテルを抜去,第30病日に下大静脈フィルターを抜去した.下大静脈フィルターへの血栓形成や血栓閉塞は新たな静脈血栓や肺塞栓症のリスクとなる.血栓溶解薬の全身投与で改善しない下大静脈フィルターの血栓閉塞に対してカテーテル血栓溶解療法が有用であった1例を報告する.

Editorial Comment
[症例]
[症例]
  • 尾松 卓, 原田 顕治, 山本 浩史, 一宮 千代, 鶴本 雅信, 寺田 菜穂, 川田 篤志, 岡田 歩, 藤永 裕之, 割石 精一郎, 加 ...
    2017 年 49 巻 8 号 p. 843-847
    発行日: 2017/08/15
    公開日: 2018/08/15
    ジャーナル フリー

     症例は,74歳,女性.大動脈弁狭窄(aortic stenosis;AS)の既往あり.労作時胸痛を主訴に当科外来を受診した.経胸壁心エコー検査で6年前と比較しASの進行を認めた(大動脈弁通過最高血流速度,2.7 m/s→4.0 m/s).またS字状中隔も認めていた.冠動脈造影検査では右冠動脈遠位部の有意狭窄を認めた.冠動脈狭窄を合併する高度ASに対し大動脈弁置換術および冠動脈バイパス術が施行された.手術は順調に経過していたが人工心肺離脱時に突然,橈骨動脈圧の低下と肺動脈圧の上昇を認めた.術中モニターしていた経食道心エコー検査で,僧帽弁前尖の収縮期前方運動(systolic anterior motion;SAM)の出現により,左室流出路の加速血流と高度僧帽弁逆流が惹起されていることが判明した.カテコラミンの中止および容量負荷によりSAMは消失し僧帽弁逆流も改善した.術直後に心不全を併発したが,以後良好に経過し術後第25日目に退院した.本症例では術前より認めていたS字状中隔が,術中の循環動態の変化に伴うSAMの出現に影響したと考えられた.術中の経食道心エコー検査は急激な血行動態の変化に対するリアルタイムな原因精査に有用であった.

[症例]
  • 中村 俊宏, 三好 達也, 住本 恵子, 平沼 永敏, 佐々木 義浩, 觀田 学, 藤井 隆
    2017 年 49 巻 8 号 p. 848-853
    発行日: 2017/08/15
    公開日: 2018/08/15
    ジャーナル フリー

     急性肺血栓塞栓症と思われた症例が慢性血栓塞栓性肺高血圧症の急性血栓による増悪であった症例を経験したので報告する.

     症例は70歳代女性.入院半年前より倦怠感を自覚,1カ月前より呼吸困難も認めた.20XX年某日,起床時に立位をとったところ,左下肢に違和感が生じ,呼吸困難増悪したため当院救急搬送.来院時の経胸壁心エコー図所見で左室扁平化と肺高血圧を認め,造影CT検査では,両側肺動脈末梢に造影欠損像を認めたため,急性肺血栓塞栓症と診断.入院の上,抗凝固療法を開始した.しかし,入院後の経胸壁心エコー図検査再検にて著明な右室拡大,TR-PG高値を認め,McConnell sign陰性であったことから,慢性肺血栓塞栓症が存在し急性血栓による増悪をきたした可能性が考慮された.治療開始後,徐々に呼吸状態は改善した.抗凝固療法開始2週間後に経胸壁心エコー図検査を行ったところ,左室扁平化の改善,右室の縮小および右室壁運動の軽度改善,左室径拡大を認めた.右心カテーテル検査では,平均肺動脈圧25 mmHgであった.自覚症状は改善し,入院17日目に退院.退院3カ月後の右心カテーテル検査では,平均肺動脈圧28 mmHgと肺高血圧が増悪しており,肺血流シンチにて右肺野の集積欠損像が拡大していたため,慢性血栓塞栓性肺高血圧症と診断し,肺血管拡張薬リオシグアトを開始した.急性期の心エコー図所見が,慢性血栓閉塞性肺高血圧症の診断に役立ったと考えた.

Editorial Comment
[症例]
  • 麻喜 幹博, 内藤 昭貴, 三木 靖雄, 渡邊 明規
    2017 年 49 巻 8 号 p. 856-862
    発行日: 2017/08/15
    公開日: 2018/08/15
    ジャーナル フリー

     症例は69歳女性.来院約2週間前より労作時の胸部症状の自覚あり.数日前より胸部症状の出現頻度と閾値の増加を認めたが様子をみていた.搬送当日22時頃より安静時の呼吸困難を自覚し,改善ないため22時41分に救急要請.救急隊現場到着時は意識あり会話可能であった.搬送中23時12分に無脈性心室頻拍を認め,心肺蘇生法(cardiopulmonary resuscitation;CPR)を開始し,車内の自動体外式除細動器(automated external defibrillator;AED)による除細動を施行.直後に病院到着となった.病着後も心室細動が継続しており,病歴より心原性心停止が疑われた.23時30分に一時的に自己心拍再開を得られたが,23時34分に再び心室細動を認め繰り返したため,体外循環式心肺蘇生(extracorporeal cardiopulmonary resuscitation;ECPR)の方針とした.救急治療室で右大腿動静脈より経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support;PCPS)を導入開始とし,23時53分に確立した.その後24時15分より心臓カテーテル検査室へ移動し,緊急冠動脈造影を施行.24時39分の初回造影で,左前下行枝(#6)に99%狭窄の責任病変を認めていたが再灌流されていた状態であった.経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention;PCI)を施行し同部位へ薬剤溶出性ステントを留置した.集中治療室において体温管理療法を含めた集中治療を行い,循環動態は安定化するとともに意識レベルも改善を認めた.神経学的後遺症なく第64病日に独歩退院となった.ECPRを行うために多職種にわたる準備を行ったため迅速にPCPS導入が行え,良好な神経学的転帰をもたらしたものと考えられた.

Editorial Comment
[症例]
  • 森 光晴, 申 範圭, 高木 秀暢, 岡 英俊
    2017 年 49 巻 8 号 p. 864-867
    発行日: 2017/08/15
    公開日: 2018/08/15
    ジャーナル フリー

     症例は70歳,女性.27歳時にリウマチ性僧帽弁狭窄症に対し生体弁による僧帽弁置換術,41歳時に生体弁機能不全に対し再僧帽弁置換術(29mm Bjork-Shiley弁),63歳時に弁周囲逆流(paravalvular leakage;PVL)による溶血性貧血および大動脈弁閉鎖不全症,三尖弁閉鎖不全症に対し再々僧帽弁置換術(25 mm ATS弁),大動脈弁置換術(16 mm ATS-AP弁),三尖弁形成術(De Vega法)の既往あり.3回目の僧帽弁置換7年後に,労作時呼吸困難の出現と溶血性貧血の進行を認め,精査にて僧帽弁後尖側のPVLと診断され,4回目の胸骨正中切開による開心術を行った.手術は弁周囲逆流が限局性であったため直接閉鎖+ePTFEパッチを用いた二重閉鎖術を施行した.術後弁周囲逆流は消失し溶血性貧血は改善した.

Editorial Comment
[症例]
  • 飯田 倫公, 谷本 匡史, 西原 大裕, 辻 真弘, 市川 啓之, 横濱 ふみ, 大塚 寛昭, 山本 和彦, 川本 健治, 田中屋 真智子, ...
    2017 年 49 巻 8 号 p. 869-875
    発行日: 2017/08/15
    公開日: 2018/08/15
    ジャーナル フリー

     症例は45歳女性.近医にて,うつ病に対して抗精神病薬を処方されていた.最近の1年間で体重が約40 kg増加,体動困難となり,ベッド上でほぼ寝たきりの状態となっていた.20XX年3月末,数日前からの呼吸困難を主訴に当院救急外来に搬送された.体重107 kgと高度肥満あり,酸素6 L/分投与下にても,低酸素血症および高二酸化炭素血症を認めた.明らかな肺疾患は認めず,肥満低換気症候群と診断した.入院直後からNPPVにて加療開始したが,呼吸状態は改善しないため,気管内挿管の上,人工呼吸器管理を行った.スワンガンツカテーテル検査にて,肺動脈圧および肺動脈楔入圧の上昇を認めた.両心不全の状態であり,ドブタミンおよびフロセミドを併用し加療を行った.その後,十分な尿量が得られ,徐々に呼吸状態は改善し,それに伴い肺動脈圧は低下した.第4病日に気管切開を施行し,第7病日にICU退室となった.第11病日に人工呼吸器から離脱した.慢性期には,減量目的にて食事療法およびレジスタンストレーニングを含めた運動療法を行い,体重は86 kgまで低下した.第78病日に気管切開孔を閉鎖し,第88病日に独歩退院となった.

     本症例のように肥満低換気症候群に肺高血圧症および重症心不全を合併した場合には,治療開始早期から人工呼吸管理など侵襲的な治療も念頭に置く必要がある.また,慢性期には食事療法とレジスタンストレーニングを含めた運動療法が,減量に有効であった.

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