心臓
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[症例]
先天性アンチトロンビンⅢ欠損症による静脈血栓塞栓症に対してリバーロキサバンが有効であった2例
井口 貴文井口 守丈手塚 祐司青野 佑哉池田 周平土井 康佑安 珍守石井 充益永 信豊小川 尚阿部 充赤尾 昌治
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2018 年 50 巻 10 号 p. 1102-1107

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抄録

 先天性アンチトロンビンⅢ(AT-Ⅲ)欠損症は比較的稀な常染色体優性の遺伝性疾患である.AT-Ⅲ欠損症においては静脈血栓塞栓症(VTE)が多発することが知られている.VTEの治療には従来からヘパリンが使用されていたが,ヘパリンの抗凝固作用は血中のAT-Ⅲレベルに依存するため,AT-Ⅲ血栓症に伴うVTEに対しては,ヘパリンの単独治療では十分な抗凝固作用が期待できず,AT-Ⅲ製剤の補充が必要とされる.近年,VTEの治療に対しては,ヘパリンに代わって直接型経口抗凝固薬(DOAC)が有効であるとの報告が相次いでなされている.DOACはAT-Ⅲを介さずに抗凝固作用を発揮するため,AT-Ⅲ欠損症に伴うVTEに対しても効果があると考えられるが,AT-Ⅲ欠損症に伴うVTEに対してDOACが有効であったとの報告は極めて限られている.今回われわれは,AT-Ⅲ欠損症に伴うVTEの症例に初期からDOACの1つであるリバーロキサバン単剤で加療し,比較的速やかに症状の改善,D-dimerの低下,および画像上の血栓の消退が認められた症例を2例経験した.2例ともその後リバーロキサバンを継続することでVTEの再発なく経過している.AT-Ⅲ欠損症に伴うVTEに対してリバーロキサバンの有効性を示唆する貴重な症例であると考え,ここに報告する.

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