心臓
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[症例]
膝屈曲位でのみ下肢虚血を呈した右膝窩動脈外膜嚢腫の1例
斧田 尚樹佐藤 文音和泉 賢一大山 美穂
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2018 年 50 巻 10 号 p. 1108-1113

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抄録

 動脈外膜嚢腫は,動脈外膜の嚢胞状病変が外部から動脈を圧迫し狭窄・閉塞を引き起こす稀な疾患で,膝窩動脈に好発する.慢性末梢閉塞性動脈疾患の95%近くを占める閉塞性動脈硬化症とは狭窄・閉塞の機序が異なり,治療法も異なるため鑑別は重要である.膝窩動脈外膜嚢腫の大半の症例で間歇性跛行を認め,これが疾患の発見,診断の契機となることが多い.今回,間歇性跛行を認めず膝屈曲位でのみ下肢虚血症状を呈したが,診断に至ることができた1例を経験したので報告する.症例は,71歳,男性.温泉に行った際に身体をかがめると右下腿のしびれ,皮膚蒼白を自覚.その後,草抜き時にも同様の症状が出現したため近医を受診.歩行時には症状はなく,両側足背動脈の脈拍は触知良好で,足関節上腕血圧比(ankle-brachial pressure index;ABI)も正常であったが,症状の原因として下肢虚血が疑われるため当院に紹介となった.膝屈曲位数分後に右下腿が蒼白となり,右足背および後脛骨動脈の脈拍触知が減弱し,ABIも0.57と低下した.エコー検査,CT検査より膝窩動脈外膜嚢腫が疑われ,外膜嚢腫を含めた膝窩動脈切除を行い人工血管で置換・再建した.

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