心臓
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[症例]
48歳で初めて胸部大動脈瘤を指摘されたハイリスクの完全型Turner症候群の1例
関 晴永緑川 博文植野 恭平滝浪 学影山 理恵菅野 恵
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2018 年 50 巻 11 号 p. 1217-1221

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抄録

 Turner症候群はX染色体欠損により生じ,低身長・性腺機能異常をはじめ様々な合併症を伴い,心血管系の異常が生命予後を左右する.大動脈二尖弁・大動脈径拡大・大動脈縮窄は約半数の患者に合併し,若年での大動脈解離が問題となる.症例は48歳女性,10歳時にTurner症候群と診断された.無月経であったが,健康上大きなイベントなく経過し,健診にて胸部異常陰影を指摘されたため当院当科受診.CTにて上行から弓部大動脈に最大径50 mmの真性瘤と大動脈縮窄を認めた.エコーでは大動脈の弁輪拡大はなく,弁機能に異常はなかった.血圧の上下肢差なく,染色体検査は45,XOであった.手術時に大動脈は二尖弁と判明したが,機能的問題はなし.上行大動脈置換のみ施行し,経過良好にて29日目に独歩退院となった.大動脈壁の病理所見は嚢胞性中膜壊死を疑う所見であった.Turner症候群の患者は体格が小さいため,大動脈径の評価ではASI(aortic size index)が用いられており,ASI>2.5 cm/m2では大動脈解離のリスクが非常に高くなる.大動脈二尖弁・大動脈縮窄・高血圧を合併する場合にはさらに危険とされている.本症例はASI 4.0 cm/m2であり,大動脈二尖弁・大動脈縮窄・高血圧を有していながらも,中年期まで無症状で経過した極めて稀な症例であると考えられる.

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